各王が散々な目にあっている頃、グラディウスは、
「おっさん! おっさん!」
サウダライトに抱きかかえられて、目的地まで散歩をしていた。グラディウスはどこに向かうのか、全く解っていないが ”楽しいことがあるよ” と言われて、期待に胸を膨らませている。
「どうしたのかな? グラディウス」
「おっさん、あてし、重くない?」
「平気だよ。おっさん元々文官……体使わないお仕事する人で体力無いほうだけど、グラディウス一人くらいなら平気」
”おっさん” は身長が2メートル越えている人造人間を祖に持つ男性体である。60s程度の少女を抱えて歩くのに困難なことなどない。
「本当?」
「おっさん弱そうだからそう思うのかも知れないけどザイオンレヴィ、あの白鳥は片手にグラディウスを十人分くらい乗せても平気なくらい力持ちなんだよ」
見た目だけはひ弱そうなザイオンレヴィだが、力はかなりの物。その腕力などの身体能力の高さがあったので、マルティルディに目を付けられて ”軍人” になるハメになったのだが、
「白鳥さん、強いんだぁ」
そんなことはグラディウスに関係ない。おっさんよりも顔が女の人のようで、体の線がジュラスよりも細い彼がそんなに強いと聞かされて、なにかとっても幸せな気分になった。
何故幸せな気分になるのかは不明だが、ザイオンレヴィが強いことを知って幸せな気分になったのだ。
「そうだ、グラディウス」
「なに、おっさん」
「おっさん、グラディウスのこと吃驚させたいから、目を瞑ってくれるかな」
「うん!」
何を見せて貰えるのだろうと、楽しみにしながら目を ”ぎゅっ” と閉じたグラディウスの顔を見て、サウダライトは思わず吹き出しそうになった。
グラディウス、瞼に力を入れるだけで良いのに、何故か口にまで力が入り 《酸っぱい物を食べてしまった人》 のような顔になっているのだ。
”もう少し力を抜いても良いよ” と言おうかと思ったサウダライトだが、不細工ながらも面白いので、そのままで足を少し速めた。
「お待ちしておりました」
そんなグラディウスを幸せな気分にしてくれた 《片腕でグラディウス十人分くらいなら平気》 なザイオンレヴィが、父親であり皇帝の命に従いあるものを準備を整えていた。
「よおし、グラディウス。目を開けていいよ」
胸をどきどきさせて目を開いたグラディウスの視界の前にあったのは 《乾いた白》 あまりに近すぎて、何か解らないグラディウスはその白の前に首を何度も傾げる。
抱いていたサウダライトはグラディウスを床に降ろして、手を引いて少しばかり離れる。その全体像を見せた。
「おっさん! あれなに! あれはなに!」
《乾いた白》 が動物であることに気付いたグラディウスは、サウダライトの袖を引き、必死に尋ねる。
「あれはね、象だよ」
「ぞう? あの長くて動いてるの、なあに!」
「あれは、鼻。鼻が長いんだよ」
騒ぐグラディウスの方を向いた象。正面から象を見たグラディウスは、
「うわああ! でっかいよ! 大っきい歯が生えてる!」
「あれ、牙っていうんだよグラディウス」
白い象に夢中。
この白象、地球時代からその血脈を繋ぐ由緒正しい象であり、地上の神話からその名を取り名付けられている。
「象、大っきいぃ!」
「ガンダーラ2599世って言うんだよ」
「象! 象!」
サウダライトの声は耳に届いていない。
それに十までしか数えられないグラディウスに、2599世と言ったところでその数が一体何を指すのか解るわけもない。
ちなみにこの ”ガンダーラ” 実は ”ガネーシャ” と勘違いして付けられた。伝承の間違いであり、これを間違っていることを知っているのは、宮殿に存在する、宇宙唯一の ”神殿” なのだが ”神殿” の方でも、白象がガネーシャだろうがガンダーラだろうが ”構いはしねえだろう。なにせ象だ” という、甚だ適当で理に適った判断によりそのままになっている。
そんな2599世の頭部には、乗るためのスペースが据え付けられている。反重力機操縦の名手であるザイオンレヴィが、ソーサーに二人を乗せて指示を出して、用意した輿に乗せ。足下にいる象使い達もソーサーに乗り、2599世に歩くように命じる。
「おっさん! 歩いてる! そして道が光ってる!」
「道にはね、昔の ”月の土” と同じものを敷いているんだよ」
輿に幕が下りているような形のスペースから、グラディウスは四つん這いになり半身を乗り出して、喜んでいた。
右後方から警備のためにソーサーに乗って従っているザイオンレヴィも、無邪気に喜んでいるグラディウスを見て少しだけ笑った。
グラディウスは道の途中で搭乗スペースに引っ込んだ。”疲れたのだろうなあ” と声が聞こえなくなり、静寂な夜空の下で彼は警備を続けた。
搭乗スペース内部が遮音であることをすっかりと忘れて。思い出したとしても、遮音にした理由が 《グラディウスが疲れて寝てしまうとおもうから》 なる父皇帝の台詞を思い出し、やはりなにも不思議に思わなかっただろう。
その時、グラディウスが達していたとしても。
四つん這いになりながら象の頭と道を楽しんでいたグラディウスの背後で、下半身の服を脱がせて、舐めて味わっていた。
グラディウスは嬌声を上げても、誰も気付かない変わった声なので誰も気付かないのだが。サウダライトは久しぶりに丹念に味わい、ある程度の所で中に引き入れて全裸にして、象の歩く震動も存分に使い楽しんだ。
達して小刻みに震えている全裸のグラディウスを、柔らかなマットの上に置いて、再び胸を揉み、敏感な箇所に舌を這わせ、内側から溢れ出している自分の残滓を指に絡めて、その後ろの方に指を伸ばす。
体が震えている理由の解らないグラディウスは、胸を触っているサウダライトの腕にしがみつく。浅い呼吸の下で、途切れ途切れに漏れる嬌声は、
「ぼげぇ……ぼげぇぇ……」
だった。
”あん” や ”はぁ……” とかいう女性らしい声ではなく、何故か「ほげぇ」か「ぼげぇぇ」
ただその声も、すぐに消えてグラディウスは意識を手放した。寝息が上がり始めたグラディウスから離れ、シーツで包み抱きかかえる。
汗で頬に張り付いた髪を除け、開いている口に何度も深い口づけをしていると、象が足を止めた。
「到着しました」
「そうか。リニアをまず呼べ」
この行為を知られたら大暴れすること間違いなしの息子に、何事もないように命じる。息子の方も、寝間着と体を拭く道具を持って現れたリニアに不審を感じることはなかった。
手足や顔を拭いて着替えさせるのだろうと。
リニアは何時ものように、グラディウスの体を手際よく拭き、パジャマを着せる。サウダライトはグラディウスを新しいブランケットで包み、
「全部洗っておくように」
汚したシーツなどを洗うようにリニアに指示し、ソーサーに乗って邸へと戻った。
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かあちゃん、とうちゃん、あてしは良いところで働いてるよ
毎日お仕事と勉強もしてるんだ!
あのね、お仕事するためにはね! 勉強しないと駄目なんだって!
ジュラスは優しくてね、おじ様はいっつもいろんな物作ってくれてね! 白鳥さんは綺麗でね、ほぇほぇでぃ様はもっと綺麗!
リニア小母さんは、いっつもあてしの傍にいてくれて、ルサお兄さんはいろんな事教えてくれるの!
それでね、昨日ね! おきしゃきしゃまにも遊んでもらったの!
おっさんは「怖いかも……」っていったけど、みんな優しかった
とうちゃんがかあちゃんの事を、よその人に「怖いよ」って笑いながら言うのと同じなのかなあ
それでね、おっさん!
おっさんね! あてしを舐めるのが大好きなんだって! 体に指とかいろんな物入れて、出したりするの
それをした後は、ちょっとお腹いたくなるけど、おっさんと一緒に寝るのは大好き
もっと大きくなったら、にょーどーとかも ”かいはつ” してくれるんだって! なんだろうね! にょーどーって!
解るようにあてし一生懸命、お勉強するんだ! そして ”知ってるよ!” って言って、おっさんをびっくりさせるんだ!
……とうちゃん、もういっぺん頭撫でて欲しいな
だめ? ……残念……あ!
頭撫でてくれてる! ありがとう!
とうちゃん……あてし忘れてないよ!
とうちゃんと、かあちゃん。あてしはもう大丈夫だから兄ちゃんとね……あれ? おかしの匂い?
「はぐっ!」
「うわぁぁぁ!」
あれ? おっさんの指だ。