、君
泥。若しくは仮面【04】
 午前二時頃までザウディンダルと行為に耽り、朝は五時に起きて朝食と昼食とおやつを用意して、寝起きのエロ行為に励み、シャワーを浴びてデウデシオンは迎えの車に乗り込んだ。
 施設に向かう途中、書類の全てに目を通す。
 ”残業などしない!”その鬼気迫る視線に、車内の空気は凍てついていた。座席と運転席はアクリル板でしっかりと区切られているというのにも関わらず。
 室長室へと入り、次々と仕事をこなして行く。
 常人なら二日かかるところを二分で終える勢い。その分量の仕事を次々と渡される部下たちは、

―― 上司の仕事が早すぎ。なう

 心の中で呟いていた。
 午前中で三日前倒しにした仕事を終えて、次にどこを前倒しにしてやろうか? と考えていたデウデシオンの元に”呼び出していた”弟がやってきた。
 もちろん秘書も、入り口のセキュリティーもすり抜けて。
「お待たせいたしました」
「デ=ディキウレ」
 やってきたのは息子に「スパイ」と言われているデウデシオンの弟、デ=ディキウレ。
「なんでしょう? 長兄閣下」
「私の家に、監視カメラを設置しろ。死角の存在を認めん」
 本当は仕事を辞めようか? と思ったのだが、それはなんとか思いとどまった。
 思いとどまった理由の最大の理由が、ザウディンダルの秘所が赤く充血していたな……ということ。
 仕事という制約がなければ、充血どころでは済まないほどに抱いてしまうだろうことを恐れてのこと。
 その他の理由としては実家に金を返す必要もあった。
 実家は裕福だが、デウデシオンの離婚の際に随分と援助をしてくれて、その際に使用した金を是非とも返したいと考えているのだが、姉と父は”息子、甥に使いなさい”と受け取ってくれない。
「……畏まりました。私も”盗撮のカリスマ”と呼ばれた男。そのプライドにかけて、貴方のお部屋を丸裸にします!」

 なんでもカリスマつけたら良いってもんでもない

「あ、ただしザウディンダルには知られないようにな。普通に過ごしているところを見ていたいからな」
 ライブ中継希望のデウデシオン。
「はいはい。でもさすがに設置する間は部屋にいられると困るので。息子に連れ出させてもよろしいですか?」
「構わん。ついでに向かいにいる”もぎもぎ”も連れてゆけ」
「畏まりました」

※ ※ ※


「お散歩いきましょうか☆」
 おっす! オラごくう……ではなく、私、ハイネルズです!
「お散歩?」
 猫耳がぴくりと動く様が可愛らしいですね、ザウディンダルくん。
「いいな」
「もぎもぎさんもご一緒に」
「おっさん、出かけちゃ駄目って」
「大丈夫です。許可を頂いて参りました。信頼していただくために、教えて貰った番号に……っと」
 テレビ電話で一発解決です。
 ダグリオライゼ氏も”しっかりとした人と出かけるのなら、安心できる”とのことです。私ほどしっかりとしている小学生もいないでしょう。
 なにせよく、高校生に間違われますから。
 ちなみに夜道では、前を歩いている女性が、よく走って逃げます。顔が怖いから☆ なんていうのかなあ、怖い顔っていうのは下からライトだけではなく上からライト、要するに外灯でも独特の怖さというものがあるらしいんですよ☆
「どこか行きたいところ、ありますか?」
「ない!」
「ないよ」
「解りました。では公園で遊びましょう☆」
 二人の手を引いて、近くの公園へと向かいました。本当に近くです。なにせこのマンション、住人専用の公園っていうのがあるんですよ。
 使用出来る人は、住人とその許可を得た人だけ。
「グラディウス、これなに?」
「滑り台だよ! ざうにゃん」
 いいですねえ、ざうにゃん。ちょっと甲冑着させてみたくなりますねえ。私がリアカーを全力で引きますとも! そうでなければ、誘拐されること間違いなしなかわいさでしょう。
 もっともデウデシオン伯父様が、恐ろしい力でお守りになるでしょうが。
「これはなに?」
「ブランコですよ。こうするものです☆」
 私はブランコに腰を下ろして、全力で漕がせていただきました。そりゃもう全力で。
「はうねるず、凄い!」
「グラディウスさん。私の名前はハイネルズ☆です。はうねるずでもよろしいのですが、その際は語尾に輝きを挿入してください」
「か、かがやきを、そーにゅー?」
「はい☆ このようにするのです☆」
「ハイネルズ、難しいよ」
 ザウディンダルくんが、猫耳を寝かせかけています。それはそれで可愛いものですね。どれどれ父へのお土産として写メとっておいてあげましょう。
「そうですか? ではまあ、はうねるずのままでもよろしいです」
「ありがと、はうねるず」
 まあ良いでしょう。なにせ私が「はうにゃん」と呼ばれても、萌えも可愛らしさもなにもありません。むしろ「はうにゃん」で私の顔では、大気が凍りついて死者が出るかもしれません。そうあの伝説の魔法のように。

 二人は公園を気に入ってくれたようで、そこで夕暮れ時まで遊んでました。先に帰ってきたエロ臭いおっさんと一緒に、
「はうねるず! また遊んでね」
「はい! またねグラディウス」
 仲良く手を繋いでマンションへと消えて行きました。
 そして私はというと、
「まだデウデシオン伯父さん帰ってこないようですから、近くのコンビニにでも行きませんか? 限定品で欲しいものがあるので」
「うん!」
 ザウディンダルくんと手を繋いで、コンビニへ。その後仕事を終えた父がコンビニまでやってきて、あとはデウデシオン伯父さんと合流後、四人で食事へと向かいました。

 そして帰宅後、盗撮のカリスマの実力をしかと見させて貰うことに☆

泥。若しくは仮面[終]


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