なにがなんだか解らないうちに夜が明けた。
私は一睡もできなかった。眠気どころか、睡眠という存在すら忘れ去っていた。
酒瓶をキッチンへと運び、瓶の中を洗う。
分別回収される以上、これは必須だ……
「…………」
蛇口から流れる水の音を聞きながら、昨晩のことを整理する。
まずは……ミスカネイアが医療用バッグを開き、血液検査用にザウディンダルの血を採取した。
「この姿の子に、キャットフードだけ与えるおつもりで? 食べられない物がないのなら、同じものを食べるといですわよ。久しぶりに料理を作られるのもよろしいのでは?」
結果が出るまでは、キャットフードだけにしておくよう言われた。
コンビニに向かう前は”生後間もない子猫”だったので、キャットフードは当然手元にはない。
「私たちがコンビニで買ってきます」
「お駄賃ください!」
「ついでに、シール貯めたいので」
「やめなさい! 私が買ってあげるから! さあ、車を出すからおいで。兄さんお金は要りませんので、ほらおいで!」
タウトライバが甥たちと共に近くのコンビニに市販のキャットフードを買いに向かってくれた。
その喧噪を見送ったあとも、ミスカネイアの検査は続いた。
「あなた。体重計に乗って」
「突然なんだ? ミスカネイア」
「この子の体重を測るの。検査結果がでるまではキャットフードで過ごしてもらう必要があるのですから。体重とキャットフードの成分を考えて、大まかな適量を出していきますから」
「そういうことか。兄さん、体重計を借りてもいいか?」
「ああ。いま持って来る」
計測の結果、ザウディンダルの体重は約20s。
「身長は110pほどで体重が20s。だいたい五、六歳児と言ったところね。では食事量は……」
ミスカネイアのメモを受け取り、
「後ろ髪ひかれまくってますが、一度家に帰りますね☆」
残る! と騒いでいたハイネルズは、なにか思うところがあったようで、連れられて家へと帰った。家といってもタウトライバの家だが。
最後のタバイが、
「息子たちが着た古着でもよければ、持って来ますが」
洋服を持って、とって返してくると言ったが断った。
「要らん、新しいのを買う。そもそもお前のところの洋服は、ミスカネイア手作りで大切に保存しているのだろう。ザウディンダルに着せるとなると、尻尾を通すために穴を開ける必要がある」
「そうですか。……あの」
「なんだ? まだあるのか」
「妻の目が、キラキラしてました。その……うちには、娘がいないので……」
ミスカネイアは可愛い格好が大好きだったな。結婚式のドレスも、可愛らしいフリルがふんだんに使われたものを着ていたし、お色直しもフリルが大量についたドレスを着ていた覚えがある。
「それは、まあ……逸脱しなければ良いだろう」
「あの目の輝きは逸脱しそうなのですが……」
”私も出来る限り頑張りますので”タバイはそう言い、去っていった。
その後酒を飲み、朝となった。
瓶を洗い終えてリビングに戻りテレビをつけて、ニュースを眺める。「今日の運勢占い!」を黙って聞いていた。
今日の私の運勢は最高らしい。
とくに恋愛運が絶好調だとか。
「恋愛……なあ」
「デ、デウデシオン……」
ザウディンダルが目を覚ましたらしい。
「ザウディンダル」
「あ、あの」
「まずは餌……ではなく食事をしよう。それと……」
全裸のザウディンダルは目の保養……ではなくて毒……でもなくて! 寒そう! そうだ、寒そうなので! 空調は万全だが! 寒そうなので!
「私のシャツを着ていろ」
「う、うん! ありがと! デウデシオン」