「ではよろしく」
「ザウディンダルくんですね」
「みぃ! みぃ! みぃ!(行っちゃやだ! デウデシオン。デウデシオンと一緒に!)」
名前に意味はない。
「ふあ〜失礼」
気を抜くと欠伸が。
結局昨日はザウディンダルの寝顔……というか、寝姿を見ながら名前を考え、ミルクを与えてまた考えを繰り返していたら寝そびれた。
「みぃ! みぃ! みぃ!(俺のこと捨てないで! デウデシオン!)」
「大丈夫だって、ザウディンダルくん。パスパーダさんはお仕事だから良い子で我慢するんだよ」
オレンジのキャリーから出たいとばかりに引っ掻いて、爪が取れないで騒いでるザウディンダルに背を向けて仕事に向かった。
※ ※ ※
「迎えにきたぞ」
「みぃ〜 みぃ〜(デウデシオン! 帰ってきてくれた! 寂しかったよ!)」
休みを取れと常々言われていたので、一週間ほど休みを取って、
「では一週間後に」
自宅でのんびりと過ごすことにした。
それにだ、
「みぃ〜 みぃ〜(なにしてるのデウデシオン?)」
「お前がベランダから落下しないようにしている」
自宅は五十階建てマンションの最上階だ。対策をとっておかないと……
「みぃ〜(トイレ。トイレ)」
「ザウディンダル。トイレはそっちで……砂を飛ばすな!」
怖がるかと思ったが、掃除機にスイッチを入れたら喜んで飛び付いてきた。何が気に入ったのか、掃除機本体に乗りたがったので乗せてやり、ゆっくりと部屋に掃除機をかける。
「みぃ〜 みぃ〜(デウデシオン、好き)」
「降りるか?」
「みぃ〜(降りない)」
「掃除機のどこが気に入ったのやら」
「みぃ〜(デウデシオン好き)」
休みを取ったまでは良かったのだが……
「くどい! ただの体調不良だ!」
弟たちや息子に一週間とまとまった休みを取ったことが知られて、痛くもない腹を探られる羽目になった。
『体調不良って! あの!』
「眠れば治る。切るぞ!」
受話器を叩きつけると、その音に驚いたザウディンダルの動きが止まる。
「お前を怒ったわけじゃない」
携帯電話のメールも次々と。休んだだけでこれ程心配されると、休んだ気にならん。