藍色の瞳が美しい子猫だった。だが……飼うつもりはない。
私は猫を拾った足で、自宅近くの動物病院に子猫を預けた。書類に記入し身分証明書をみせて書類に記入して自宅へと戻った。
三日ぶりにみた子猫は、濡れて震えていた子猫と同じ猫とは思えないほど、元気を取り戻していた。
「パスパーダさん」
呼ばれて代金を支払う段階で、引き取るつもりはないと告げた。
「引き取らない?」
「治療代は払うが、引き取るつもりはない。里親を捜してくれるか、そのまま処分するか。それは任せる」
「少々お待ちください。先生に聞いてみないと解りませんので」
私は再び待合のソファーに腰をおろす。
「パスパーダさんですか?」
「みぃー! みぃー!」
子猫の入ったキャリーを持って現れた獣医。
「……獣医?」
銀髪で白衣の男。猫を渡した時の獣医は灰色の髪の女だった。
「まあ一応獣医のエーダリロクっていいます。名字は看板にある通り、セゼナード」
目の前にいる”一応獣医”のある部分に視線が釘付けになった。
「そいで、これ。カルテみたら名前なかったけど、この黒い毛並みが綺麗な、オッドアイの子猫。処分していいんだな」
「……ああ。一つ聞いてい良いか? 処分方法は”それ”か」
エーダリロクと名乗った獣医は、首に蛇をマフラーのように下げていた。
私は蛇の種類は解らないが、相当に大きい。
「おう。餌にする。っていうかさ、あんた入り口の看板よく見た? 見ないで駆け込んできたんだろうけどさ」
言いながら獣医エーダリロクは、キャットフードなどのパンフレットが入っている封筒を眼前に差し出した。
封筒に書かれている文字。
―― セゼナードペットクリニック[爬虫類専門]
「普通のペットも引き受けるけどさ。俺の専門は爬虫類。まあいいや、これ貰うね。さあニュレベンティレー、ご飯だぞ」
言いながら、獣医(爬虫類専門)の男は、キャリーを開き、
「みぃ! みぃ! みぃ!」
手を突っ込んだ。
「ま、待て!」
男の策に乗せられた気もするが、黒猫を引き取ることにした。