繋いだこの手はそのままに −1
「ロガ殿を満場一致で皇后に推挙させていただきます」
めでたし、めでたし。

− 終 −


− 終 − から遡る事二年。

「この役立たず共が!」
 第37代皇帝シュスタークの忠臣宰相デウデシオンが怒鳴り声を上げる。円卓に座っているのは四大公爵の当主達。
 皇族系の宰相に怒鳴られて黙っていられるような性格ではない“王”達なのだが、この時ばかりは黙っていた。
「四年待ってこの体たらく! 貴様等どうしてくれる!」
 卓上を叩き続けるデウデシオンに、
「我々とて、最善の努力を尽くした」
 リスカートーフォン公爵ザセリアバ=ザーレリシバは、顔に手を当てて呻くように返すが、
「実を持ってこそ、結果を出してこそ“最善の努力”だ! 最善の努力を尽くしても戦争に負けたリスカートーフォンなど、リスカートーフォンではない!」
 怒り狂っている宰相には通じない。むしろ、怒りの炎に油を注いだようなものだ。
「努力だけは買ってくれ。妃は無理をして三年連続で子を産んで身体を壊したのだ。新しいのに取り替えると言うわけには」
 アルカルターヴァ公爵カレンティンシスは、卓上を壊さんばかりに叩く宰相は
「知るか! そんなヤワな女! 世の中には年子で15人産んでもビクともしない女もいるのだぞ! ああ?」
 知ったことではないと怒鳴り返す。
「悪い知らせだが……妃は懐妊した。だが性別は男だと報告がきた」
 ヴェッテンスィアーン公爵ランクレイマセルシュは宰相に視線を合わせないで“報告”した。
「そんな報告いるかっ! 王子なんぞもう一匹たりとも必要ない!」
 王子を“匹”呼ばわりしながら、宰相は最後の一人に視線を向ける。視線があったケスヴァーンターン公爵ラティランクレンラセオは首を振る。
「後二年は待てないか? 後二年で必ずや王女を産ませてみせる」
「ふざけるな! 後二年だと! その時は既に陛下は二十五歳。0歳の貴様等の娘が皇太子殿下を産めるようになるまで何年かかると思っている! あ? 9歳で産めるか? 産めると確約できるなら待とう!」
「無茶を言わないでくれ」

 第37代皇帝シュスターク。彼の人生は『呪い』に彩られていた。

 一つ目の呪い。
 それは有名な『シュスターの呪い』
 皇帝の事をシュスターと発音するが、この場合は初代皇帝本人を指す。
 初代皇帝がケシュマリスタ最初の王・エターナを愛していたのは周知の事実。結局離れ離れになった二人だが、この二人の子孫の容姿が初代達に似れば似る程、初代と同じ傾向を示す。そう、何故か愛し合ってしまうのだ。
 最初の頃は、唯の偶然だと思われていたのだが、ある暇な皇族が統計を取った。
 「黒髪・皇帝眼・軍人・男性」と「ケシュマリスタ型金髪・皇帝眼・男性」の肉体関係を。統計を取った皇族は余程暇だったに違いない……だが、その暇のお陰で大変な事実が浮かび上がる。
 高確率でこの容姿を持った二人は、関係を持つのだ。一緒において置けば三日で出来上がるような始末。
 その暇な皇族は、もう一つの統計を取ってみた。
 「黒髪・皇帝眼・軍人・男性」と「ケシュマリスタ型金髪・皇帝眼・女性」の相性を。
  シュスターの妃はエターナの姉・ロターヌ。弟と同じ顔をしていた彼女だが、夫と弟の関係に腹を立てて色々な事を仕出かしたとして有名だ。それで、夫である シュスターと反目しあい、最後の方は憎みあっていたと。その伝説に近い建国神話に沿って調べたところ、結果は見事な程最悪だった。それどころか、「黒髪・ 皇帝眼・軍人・男性」の「皇帝」は見事な程、性嗜好が男性に向いていた。
 この結果……と笑ってられるうちは良かったのだが、第27代・第28代皇帝が「これ」に見事に該当し、子のないまま崩御する。
  ここから皇位継承に関しての迷走が始まり、第31代で完全な混迷となり、暗黒時代が訪れる。五十五年の内戦の後、崩壊寸前の“人類”を救い上げたのが第 32代皇帝ザロナティオン。このザロナティオンがこの統計と暗黒時代の発端を絡め「シュスターの呪い」と言った所から、この言葉が定着する。

で、何が呪いかというと……第37代皇帝シュスタークは、ものの見事に初代皇帝に似ている。

 名前を見れば一目で解るが、シュスタークは完全な皇帝だった。あまりにも初代皇帝に似ているので、皆が出来るだけ男性に興味を持たないよう育てるのに細心の注意を払った程に。

 二つ目の呪い。
 それは近年打ち立てられた『ティアランゼの呪い』
 ティアランゼは本名で、皇帝名はディブレシア。シュスタークの母親である。
 故人となった彼女なのだが……


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