藍凪の少女・下働きとおっさん[08]

 グラディウスは午前中の仕事、四阿の掃除に来てサウダライトと話をして、そのまま仰向けに寝かされた。
 愛撫を 《くすぐったい!》 と笑って転がるグラディウスに、それでも諦めずに愛撫を加えるサウダライトを褒めるべきであろうか、罵るべきであろうか?
 全てが終わって一言、
「貴族様っておしっこ白いんだぁ」
 サウダライトはその余韻に満足して、裸のグラディウスを抱き締めた。


 グラディウスは昨日 《おじ様》 から貰った硝子球をおっさんにも見せてあげようと、ジュラスに買ってもらったケースに入れて持って来た。
「髪を飾っているベゼラも似合っているよ」
 見せられたサウダライトは ”貴族の手だな” と感じながら、グラディウスの説明を聞く。
『グラディウスの付けているベゼラの飾り花は、ミュゲーンだな。と言うことはケーリッヒリラ子爵か?』
 見事な推理力で正答に到達したのだが、
「おじ様がくれたの!」
 最後の一言で自分の推理が間違っていると判断を下した。
 四十歳の自分が 《おっさん》 で二十二歳の子爵が 《おじ様》 はあり得ないだろうと。
「ベゼラ? このリボン?」
 誰が作っても良いかと考えることを止めて、目的を達成させることにした。
「そうそう。ちょっと良いかな?」
 サウダライトはグラディウスの三つ編みを留めているゴムを隠すように結われた硝子のリボンを手に取り見つめる。
「上手な人が作ったんだね」
「こんな凄いのも作れるんだもん! 凄いよね、宇宙!」
「グラディウスは宇宙が好き?」
「うん! 何時かもう一回行ってみたいな。みんなと一緒にいけたら良いな!」
「おっさんも一緒に行きたいね。いや、おっさんと一緒に行こう」
 掴んでいるグラディウスの三つ編みを伝いながら、徐々に距離を縮めてゆく。
「楽しいだろうなあ。おっさんと一緒だったら」
 互いの鼻が触れる程近付き、グラディウスの大きい瞳をのぞき込む。
「おっさんの目って右と左が違うんだね!」
「今気付いた?」
「うん!」
 サウダライトはグラディウスの唇に軽く触れる。あまりに軽く触れられたので、グラディウスは全く気付かず近くにあるサウダライトの瞳をみつめ続ける。
「面白い?」
「うん!」
 笑顔で返事をしたグラディウスの手から大事にしている硝子球を取り、四阿のテーブルに乗せてから腕で囲むように抱き締めた。
 大きく広がったマントに何が起こったのかと驚いて見上げていたグラディウスは、近付いてきた 《おっさん》 の顔と、再び近くで見ることのできる左右の違う瞳の美しさに目を奪われ、何も考える事が出来なかった。
 情欲を含んだ舌が口内に滑り込み、手袋を外しその指で大きな胸を、痛がらせないように揉みしだく。
 やっと気付いたグラディウスは、おっさんの顎を手で押しながら顔を離そうとする。 
「駄目だよ、おっさん! 村長さんに叱られるよ!」
「大丈夫だよ。おっさん、村長さんから良いよって言われたんだよ」
 一度身を離し、端末の画面にグラディウスの住んで居た村の村長の映像を出す。
「ああ! 村長さん!」
 画面に現れたのはグラディウスの村の村長。
 その 《画面の村長》 はグラディウスに 《そのおっさんは良い人だから》 と話掛けてきた。
「じゃあ、おっさんには触らせていいんだ!」
『そうよ』

 皇帝の権力……ではなく、貴族程度の力で出来ることだが、グラディウスの生まれ育ったエルダーズ28星から 《村長》 を探しだし取り込み、同時に喋り方を記録して専用のソフトを用いてサウダライトの都合の良いように喋るように設置する。
 要するに映像は偽造なのだが、グラディウスには当然わからない。
 貴族の力を持って、本当に村長に言わせる事は当然可能で、指示を受けて情報を集めた息子のザイオンレヴィも 《欲しい発言くらいなら、惑星管理官に命じれば》 言ったのだが、サウダライトは偽造させた。
 ザイオンレヴィは下働き区画に関してあまり興味もない上に、父親である皇帝に 《クライネルロテアに知られると面倒だから、内緒で》 と頼まれれば嫌とは言えない。
 双子の妹がかつて父の愛人に対して取った行動を思い返すと、
『父上の言い分も解る……』
 納得せざるを得なかった。
 この時の双子の兄妹の、父の愛人に対する見解の違いが、大きな問題を引き起こす。
 クライネルロテアがもう少し父親の愛人に対して優しい性格であれば、ザイオンレヴィは妹に 《グラディウスについて》 尋ねた。
 グラディウスについて彼が妹に尋ねていたら、彼はこの任務を引き受けることはしなかった。
 兄を含めた三人とも真面目な母親に育てられ、性行為に関してはかなり厳しく教え込まれた。放埒が許される大貴族の子女となれば、どれ程厳しく育てても充分ということはない。それが今は無き母親の考えであり信念であり教えだった。
 その薫陶が行き渡っている妹は行き過ぎる感のある姫に成長したが、ザイオンレヴィは少し引いた形で育った。
 父親の愛人好きを理解する彼だが、母親の言い分 《結婚は成人年齢に達してから》 はその通りだと思っていた。
 イネスの三人の結婚が十八歳に設定され、彼等の母親が十八歳で結婚したのは、この母親の強い意志である。
 ザイオンレヴィは皇帝に 《グラディウスは十五歳》 と言われて、それを信じて今回の任務を引き受けた。
 十五歳でも早すぎるとは思ったのだが、父親が本気で気に入っていると言い、なおかつ

『手を出すのは十六歳になってからにするから』

 言われて、息子は信じた。一年くらいなら父親も我慢できるだろうと。

『村長が結婚する相手以外に身を許してはいけないと教えて、それを頑なに守っていて、愛妾になることに同意してもらえない。愛妾がどういう物か解らないからだと』

 ザイオンレヴィは妹から 《鈍そうな娘を父親が気に入っている》 とは聞いていたので、農村出身の愛妾を理解できない子なのだろうと理解して、此方に都合の良い返答をするように調整したプログラムに元になる村長の音声を放り込み端末を調整する。
 村長がグラディウスに愛妾になることを勧める仕組みにしたのは、ザイオンレヴィの中に 《口約束で正妃にしてやるとか言われると困るしなあ》 なる貴族らしい考えがあった為。
 なので結婚を勧める発言は弾き、あくまでも愛人を、肉体関係だけを勧めるようにして父親である皇帝に渡した。

 シルバレーデ公爵ザイオンレヴィは皇帝を、息子は父を信頼していたのだ。

 後に彼がグラディウスは十三歳で、既に父親に手を出されていると知った時、何かがぶち切れて、以来父親をあまり信用しなくなるが、今は家臣として息子として父を信頼していた。


「赤ん坊が出てくる所がひりひりする」
「おっさんがお薬塗ってあげるね」
「ありがとう。なんかぬるぬるする薬だね」
「うん、媚薬だから。子供の体にはある程度の補強をしないと、かかる負担が大きいから」
「?」
「時間はまだあるし、もう一回。おっさんの指が何処まで入るかな」
「おっさん、指入れて楽しい?」
「たのしい。おっさん寒がりだから、ここ暖かくて落ち着くね。グラディウスも自分の指入れてみてごらん」
 当然ながら午後の仕事も無い事にされていたグラディウスは、昼過近くまでおっさんと遊び、庭に用意されていた浴槽に二人で入り、おやつの時間まで遊んだ。

 その日の夕方、
「ただい……あら? グラディウス」
 仕事を終えて部屋に戻ったリニアは、既にベッドでぐっすりと眠っているグラディウスに出迎えられた。
 仕切りのカーテンが開いているグラディウスのベッドの傍まで近寄り、
「体は洗ったのね。慣れない生活で疲れが溜まっていたんでしょうね」
 リニアは毛布をかけ直し、カーテンをゆっくりと引く。
「楽しい夢でも見ているのかしら」
 幸せそうなグラディウスの寝顔に優しい言葉を掛けながら、彼女は夕食を取りに部屋を後にした。


− 十三歳だと知っていたら、絶対に引き受けませんでした。って言うか、簒奪した! あのエロ親父め! −
[簒奪を叫んでも、誰にも咎められなかった男・シルバレーデ公爵ザイオンレヴィ]

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