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アシュレート寵愛ver.[2]

 何時もより緊張した空気のもと、シュスタークとアシュレート夜は更けてゆき、
「……」
「……」
 最初の夜のとき以上の緊張感が辺りを包み込む。
 侍女だって侍従だって、近衛兵だって緊張している。なにせ”頭髪でスライス技能”を磨きに磨いた正妃と狙われていると思われる皇帝。
 近衛兵団団長として待機しているタバイの緊張は最高潮で、妹妻に「仕事に行ってくる」と言い「行ってらっしゃい」と見送られつつ折られた首が痛むような気がするほど。普通は折られた死ぬのだが、そこはタバイなので。
 美しいまっすぐな髪を梳くアシュレートの姿。
 普段であれば美しい姿だと褒めるだけでいいシュスタークだが、今日はそうもいかない。見慣れた艶やかさが「今宵美しき金髪、血を吸いたがっている」と言わんばかり。
 実際その髪が吸おうとしているのは血ではなく精液なのだが、それを知っているのは髪を梳いているアシュレートのみ。月明かりで美しさの増す髪と、真剣な面持ちのアシュレート。
 さりげなく足を組み、膝の上に組んだ手を乗せてガードするシュスターク。

―― アシュレートが本気を出せば、髪で余の胴体を真っ二つにすることも可能であろうな……だがチンコミンチされるよりならば、胴体をスライスされた方がマシではないだろうか……

 シュスタークは諦めかけていた。諦め黙ってスライスされようと覚悟を決め……た所で、

―― いかん! 思い込みだけで適当に流してはならん! それは解決にはならんのだ!

 皇帝として踏みとどまった。
 アシュレートがどうして怒っているのか? 解明しない限り怒りが持続して、この先もっと大変な事になることが予測されると。
 《アシュレートがどうして怒っているのか?》自体が思い込みなのだが、この勘違いにより事実を明かにしようと思いとどまったのだから、良い方向に動いたとも言える。
「アシュレート」
「はい、陛下」
「あのな……今日は髪が何時もより美しく輝いておるな」
 シュスタークは立ち上がり、アシュレートの隣に座って手袋を脱ぎ髪を梳く。
「陛下」
「アシュレート」
「はい」
「……(やぶ蛇にならず、地雷を踏まず、気分を害さず、セックスでなし崩しにしないようにする為にはどうやって聞けばいいのだろう)」

 そんなこと(シュスタークとアシュレートでは)不可能である。

 皇帝がスライスにされかねない状況に、タバイは耐えられなくなり近付こうとしたのだが、シュスタークが無言で制する。
「アシュレート、髪の毛でなにか鍛錬していたようだが……その、理由を教えてくれないか」
 そしてシュスタークは一縷の望みをかけて、行っていたことを尋ねた。
 実際は一縷の望みをかけるもなにもないのだが、完全なる太陽の破壊者に拳一つで立ち向かうくらいの勇気を持って。

【は? 立ち向かわれても困るんだけど】

 シュスタークに知られていることに驚き、そして羞恥に嘖まれたアシュレートは顔を伏せる。アシュレートの表情は読みやすいので「照れた」ことは解ったシュスタークは―― 嫉妬でミンチではないようだ ―― 暗雲立ちこめていた心に陽光が差し込み、ラッパが鳴り響き元気も出て来た。
 ただしラッパが演奏しているのは、エヴェドリット国歌。別名・帝国葬送曲。エヴェドリットは何処まで行っても不吉である。
「そんなに照れるな、アシュレート。余はどうしても知りたいのだ? 教えてくれないか?」
 シュスタークの一押しで、
「陛下……言葉では説明し辛いので、実際にお見せしたいと思います。あの……お借りしてもよろしいでしょうか?」
 アシュレートはシュスタークの胯間に触れる。
 事態解明をしないままに”到達”してしまった。照れたアシュレートは、このまま引き下がる訳には行かないと、普段は決してしないシュスタークの服を脱がせて、皇帝の中心を取りだそうと必死になる。
「あの、できれば! 言葉で説明してから! のほうが、余も、その覚悟きまっ! 決まるっ! とおぉぉ!」

―― 余のチンコ、ミンチのピンチ!

 全人類を統治する銀河の皇帝は、焦っていても余裕がった。当人は「ない!」と叫ぶであろうが、どう考えても余裕がある。ミンチのピンチでであるからして、ピンチがミンチになれば事態は終息するとも言えよう。誰が言うのかは不明であるが。

「ま、待て! アシュレウトゥゥゥ! ちょっと落ちついて話せばたぶんわかり合え……」
 ズボンを膝の辺りまで下げられ(ブーツ着用のため、ズボンから脱ぐと膝までしか降りない)逃げようとしたシュスタークだが、脱ぎかけのズボンに足を取られて前のめりに転びかける。
「陛下!」
 タバイが駆け出して転びそうになっていたシュスタークを支え……たところ、背後から迫ってきたアシュレートがシュスタークを抱き締めて、ズボンを脱がせるのに邪魔なブーツを鍛えた《かみわざ》で剥ぎとる。一個丸ごとの林檎の皮を剥くように。
 ブーツが剥かれズボンが足首まで落ちてゆき、無防備になった尻と前方。
「アシュレートォォォ! その、余のチンコに用事が?」
 ここまで剥かれたら、最早それ以外の回答は残っていない。
「……はい」
 照れ俯いて答えるアシュレートに《かみこき》なる存在を知らない、清らかに属するシュスタークは「あああああ!」と脳裏を走馬燈が縦に移動。シュスタークは後ずさり。
「陛下!」
 飛びかかってくるアシュレート。”帝后を倒すべきか? 皇帝を連れて逃げるべきか?”を悩むタバイ。シュスタークは天地無用で行き交う走馬燈を見ながら決断を下す。
「下がれ、タバイ!」

―― 一回攻撃を喰らってから、理由を聞こう

 手で覆い隠していた急所を露わにして、アシュレートを抱きとめる為に両手を広げる。
「陛下」
 アシュレートはシュスタークの足を刈り、体勢を崩させてそのまま抱き上げてソファーへ。―― あれ? ―― 腹の辺りにアシュレートの頭でシュスタークは落ち着きを取り戻し ―― あれ? あれ? あれ? ―― 温かい感触に髪を撫でる。
 アシュレートはというと、ソファーに寝かせた丸出しシュスタークのチンコがあまりにも縮み上がっていたので「寒い思いをさせてしまった!」とばかりに、急いで温めるべく口へ。
 寒い思いはしたが、主に精神的な寒さだがそこら辺はアシュレートには解らない。
 髪を撫で始めたシュスタークに、当初の目的を思い出し、口を離して自分の髪を掴み巻いて優しく掴み扱く。
「あの、陛下……こういうのも、あると……聞いたのです。口で答えるの難しくて」
 恥ずかしさから目を閉じて顔を背けて。結果、シュスタークのそれに頬が触れしまうがこの場合は問題はない。
「そ、そうだな。説明してもらったとしても、実際こうしなければ余も解らなかったであ……初めての感触だが、心地よいぞアシュレート」
 走馬燈は停止し、縮み上がったチンコも息を吹き返して、中身は自由に羽ばたきまくって散りまくる。

―― 勘違いして悪かった、アシュレート

 この後、シュスタークは馬鹿正直に「チンコをミンチにされると思ってました」と答えて、アシュレートの機嫌を損ね大変なことになったのだが……それはまた、別の機会に。


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