PASTORAL −32
 我が兄、サフォント帝が婚礼の五日間のうちの一日を異母弟であるエバカインと過ごすといわれた時、私は
「でしたらば、五日間エバカインと一緒に過ごされたいかがでしょう? 久しぶりに戻ってきた弟ですし、この先暫くの間、皇族として陛下にお仕えするのですから。陛下も偶にはお休みになられた方がよろしいのではないでしょうか?」
 そう言ってみた。実際、一年以上前から挙式用にスケジュールを調整していた為、公式行事などは全く入っておらず、また一ヶ月前に式を潰したので他の予定を入れる事も出来なかった故に、やや暇が出来ている。
 兄上は、ほんの僅かだけ考え、そして私の提案を受けてくださった。
「では五日間を過ごすために、実務と儀礼をこなしておこうか。本日はルライデの初夜検分であったな」
 確実に結婚、要するに肉体的な関係を結んでいるかどうかを確認するのは大貴族にとっては当然の事だ。大体はその一族の当主が責任を持って行う。エバカインの場合は、婿に行った上に、行った先が四大公爵家ではなかったので、サフォント帝自らが立ち会うわけにはいかなかった為、あのような事態に陥ったのだ。
 やはり検分は必要であるな。
 私と妻の結婚の検分は既に終わっており、クロトハウセとエリザベラの結婚は当然ながら白紙状態、残るは末弟のルライデのみ。
 時間に合わせてサフォント帝と共に私もルライデの宮へと向かったのだが、本来ならば寝室にいるはずのルライデが、何故か寝室前の扉で平伏していた。
 ルライデの申し出は「デルドライダハネ王女と結婚後の処遇が平行線なので、いまだに床を共にする事ができません」というものであった。彼女は、サフォント帝と結婚したくて此処まで来たアルカルターヴァの跡取り一人娘、ルライデはケシュマリスタ家に王として入るといわれている。
 位的に相反する二人ではあるが、サフォント帝の初夜検分を受けられないほどではない筈だ。
「そうか。なれば余は検分せぬ、よって婚儀後の決断も自身達で行え。良いな」
「御意」
 顔面を絨毯に埋める程押し付け、ルライデは返事をした。
 サフォント帝は踵を返し、執務室へと戻られ座られると同時に命ぜられた。
「カルミラーゼン。主の子がケシュマリスタを継ぐ事となるであろう。選ばれるのは第一子、どちらの妃に産ませるかは主の判断に任せてやろう」
「御意」
 それだけ言われると、サフォント帝は仕事へと戻られた。
 我が兄サフォント帝は基本的にベッドで眠る事はない。サフォント帝にとってベッドは性欲を満たす場であり、休息は効率の良いポッドで行うものである。一時間で七時間分の睡眠効果を得られる、軍用のポッドを自身の寝室に設えさえ、それで休まれておられる。
 卓抜した内政の才があられるサフォント帝は、あまりに効率よく執務をこなされ過ぎて稀に仕事がなくなる程のお方だ。
 その際に休まれるなり、どれか気に入った相手と閨で楽しまれるなりなされればよろしいのだが、それもなされない。

なので………………(18点リーダで申し訳ない)

 赦せ、エバカイン! お前の兄の二度目の大失態だ!!!!(!←コレ四つもつけて申し訳ない)

「陛下がゼルデガラテアとベッドで共に眠られるとは」
 嗚呼! 嗚呼!! 我が兄サフォント帝が情交なされている際に緊急報告に上がった事がある私としては、サフォント帝の海綿体の膨張率……超海綿体の凄さ……超々海綿体の持続性……陛下は陛下であられ、私は全てにおいて陛下に劣っているという事を、下半身の髄から知っている!

 男には男にしか理解できない“敗北”というモノが、確かに存在するのだ!

 私の男性的敗北宣言などはどうでもよいが、エバカインの……無許可の貨物船の船員に犯されている事はなかったらしいが……ある意味……犯されていた方が、エバカインとしては楽であったのかもしれない。こんな事まで考えてしまう兄を赦して欲しい!
「初体験が我が兄サフォント帝というのも……栄誉ではあるが、栄誉と名誉と引き換えであっても、辛かろうに……」
 この勢いでいけば、間違いなく毎日正妃と契る時間に合わせて……。
 それにしても我が兄サフォント帝よ、部位を丹念に調べる為とは言え、初物である可能性のあった弟を後背位で攻め立てるのはいかがなものか?
 エバカインも驚いたのではなかろうか? 実際初であった訳であるし。
 確かにエバカインに直接「犯されたのか、正直に答えよ」と命じるのは、可哀想ではあるが……それでもいきなりバックはいかがなものか? 我が兄サフォント帝には、何か深いお考えがあるのでしょうが。だが……処女……ではないが、処女と表現しても全く問題のないエバカイン。
 サフォント帝は処女と契るのは、正直苦痛なはずなのだが(大き過ぎで、きつ過ぎる)低周波でそれ程解したのだろうか?
 だが、あまりにも解し過ぎていると経験があったかどうか解からない訳であるし、濡れるかどうかも確認するのだから潤滑液も使う事ができないのだから……。エバカインも辛かっただろうが(辛い所ではないだろうが)サフォント帝も御疲れ様であられました。……ちょっと言葉が可笑しいようだが、我が心中だ、別に多少言葉が乱れていても良いであろう。
「陛下がゼルデガラテア殿下と同衾なさっておられるそうですわね、大公殿下」
「よくぞご存知で、もう宮廷内に情報網を築かれましたか大公妃殿下」
 済まないな、五日間と申し出てしまった私を赦してくれ……
「大公妃殿下、私はこれから陛下へ朝のご挨拶に伺ってまいります」
「いってらっしゃいませ、大公殿下」


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