君が消えた六月三十一日
[11]<F>私のはなし・名状しがたき 〜 諸事情と注意事項
【諸事情Q&A】
Q1:風景がまったく描写されていませんが?
A1:下手なこと書くと場所が特定されるから書かない
Q2:ホセやベラスコの武器スペックkwsk
A2:武器について詳しく書くと誰なのかばれてしまうので割愛
二人の愛用の武器は恐くて触れなかったけど(暗殺者の獲物とか触れるか!)銃は触らせてもらった。拳銃じゃなくて小銃クラスな。
映画なんかだとこういった場合、護身用に拳銃渡されたりするけれども、そういったことはまったくありませんでした。
―― 後日分かったことですが、銃が欲しいと言わなかったことで、正真正銘日本生まれの日本育ちだと(事前に送った履歴書)確信したとホセに言われました(通訳を通して)銃を欲しがったら警戒されることになったようだ。
儀式後、トニオの家で辿りついた時、撃ってもいいぞと言われたので撃ってみた。マンガみたいにひっくり返ったよ。体が痛いよりも音で耳が痛くてしかたなかった。
Q3:もう少し周囲の人たちの様子を
A3:A1の答えと同じく書くと特定されかねないので
正直なところこれを、一人称で書いているのは、出来るだけ視野を狭めるためです。周囲のことについて詳しく書くと、迷惑をかける恐れがあるので。それと瑞原みたいなのに利用されると困るので。
もっとも、あの頃の私はまだ世間知らずの学生だったが、いまは違う。貴様等の企みを見抜いて裏をかく!(まゆりの件でいいようにされてたの、誰だっけ?・タバサ)
Q4:瑞原とマウロがどうなったのか書くの?
A4:死体の詳細は書かないよ。直接観た訳じゃないから
Q5:10ドルで裏切って殺された子たちは銃殺?
A5:いいや……口を割らせる拷問→死亡(失血死) だったそうだ。片言の日本語でホセが説明してくれた
悪党面のホセが「血ガ、タクサン、デター、シンダー、指キレタ」と語った時は、どんな顔していいのか分からなかったので、某有名アニメの言葉通り笑ってみた。
Q6:コカの葉、食った?
A6:食ってないよ。辛かったら食べていいんだぞって、ベラスコが渡してくれたけどお断りした。トラックに乗せられてた人たちは羨ましそうに見てた……気がする
Q7:トニオの登場は終わり?
A7:いいや、帰りに立ち寄った際にもう一度登場する
Q8:まゆり事件のことを考えると、メッセージを送ってきた人物を疑ったほうがいいのでは?
A8:心配してくださり、ありがとうございます。メッセージを送ってきた相手は、間違いなく二宮医師でした。
センセイ! メッセージで治験依頼持ちかけないでください! 在学生使ってくださいよ! ミスカトニック大学の生徒なら、治験で大失態かましても、行方不明でカタがつくでしょう! 【あいつ】壊れちゃったんですか! 壊しちゃったんですか! そうだとしたら、グッジョブ!
Q9:<F>は今、自宅警備員なんだよね
A9:はい私は自宅警備員です
いや、就職しないかって誘われたよ。
ただいま書いているメキシコの某組織とか、ロシアの某組織とかな。そこに就職するくらいなら、自宅警備員のほうが良いよねー。あと二宮医師の治験体とか、某宗教の司祭職とか……世の中には就職しない方が良い人間ってのはいるんですよ。
普通の企業に就職してみたら? 地元の中小企業は地元の大学出た生徒を優先するからさあ、海外の名前も聞いたことないような大学卒は採用してくれないよ。
それに下手にアメリカの大学卒業なので、英語を期待されて困る。
コンビニでバイトした時なんだけど、外国人の客を全部、私に回すのは止めてー! 私は英語分からないんだからー!
質問がたまったら、またこうして返信しますよ。それでは蕃神の儀式に戻らせてもらいます――
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ベースキャンプとは違うが、行く先々に前もって人力で食糧や水が運び込まれていて、それらを補給しつつ進みました。
そうだねえ、メキシコの霧深い山中で「六甲の美味しい水」のペットボトルを見たとき、驚くと共にカルテルの本気さ加減にぞわぞわしたね。
食事はレトルトが主力だったんだけれども、真空パックされた要冷蔵のイベリコ豚を炭火で焼いてくれたりもした。
メキシコの山中で食うイベリコ豚とか、もうね意味分からないよ!
そうこうしながら車酔いにも慣れ始めたある日、霧が深くなり車を進めることができなくなった。ベラスコがハンドルから手をはなして銃を抱え、ホセも銃を「がちゃっ」て、よく映画なんかで撃つ前のモーションあるじゃない? あれをしたんだよ。
「どうした?」
「この霧 変」
何時の間にやら片言の日本語を覚えたベラスコが答えてくれた。
映画ミストのミストなのか? そんなことを考えながら黙っていたら、窓に人がへばりつき! ……前の護衛車の人が降りてやって来て、身振り手振りでホセに話しかける。
ホセは防弾処理されている窓を開けることなく聞いていた。
そうしていると今度は後ろの護衛車の人がやって来て、ベラスコに窓ガラス越しに話しかけて来た。私は当然意味は分からないのだが、同じことを言っていることは分かった。
ベラスコもホセも頷くようにして、私に声をかけてきた。
「霧 壁 進め ない 壁 後ろ ある 戻れない 人間むり 悪魔 倒せる? 場所 儀式 この 先」
”悪魔”とは蕃神のこと。辞書に該当する言葉がないので、話をする際には悪魔ということにしている。
平和ぼけしまくり、異世界慣れしてしまった私は何も感じなかったが、この霧は怖ろしいもの……だったらしい。分からないのだから仕方ない。
窓にへばりついて外を見るが、深い霧らしいとしか分からず。だが蕃神関係は私の守備範囲なので、どうにかするしかない。
その時ヘラクレス(仮)さんが、蕃神の儀式が終わるまではネクロノミコンの影響はないと言っていたことを思い出したので、
「車 降りる」
車から降りることにした。私が乗っている車は後部座席の鍵が前の二人が同時にロック解除しないと開かない代物になっている。車に取り残されて死亡するような作りだ――いや、実際は守るための作りらしいんだが……。
二人は鍵を開けるが、自分たちがドアを開く迄は待てと。
なんという紳士暗殺者! ホセが降りてドアを開けてくれて降りてから、ベラスコがやってきた。二人と護衛車に乗っていたホセやベラスコよりも腕はよくないが、それなりに殺したことがあるらしい人たちに囲まれ、恐怖に駆られてトラックから降りてきた人たち――幌しかついていないので、霧が容赦無く入り込んでいた。そして怯える山羊などの生贄の動物。
先頭へと行き彼らが「壁! 壁!」と騒いでいるところへ近付く。
一旦ホセが私を止めて周囲よりも一層深い霧に触れ、私の隣にいたベラスコが腰から拳銃を取り出して一発壁に向かって放ったが消えた。
ホセやベラスコたちは顔を見合わせて首を振る――
このとき私は意味が分からなかったので、戻ってから通訳を通して何があったのか聞いたところ、弾丸の音が消えたと言っていた。霧の壁に入った瞬間、弾丸が消え去ったと。水に撃ち込んだとしても、あんな感じに音が消えることはないって……ホセが言ってた。
彼らにはどうすることもできないので、ここでミスカトニック大学にスカウトされた狂人こと私の出番です。
っても、あんま深刻な気持ちはなくて、取り敢えず触ってみた。そうすると霧が一気に晴れた。あれね、凄いね。目の前で起こった出来事だけど”CG?”って思ったもん。生きている、もしくは意志を持っている霧というのを初めて見たよ。
そうそう見る機会があると困るものでもあるのだが。
私たちの周囲の霧が晴れ、現れたのはドア。空中に扉が一つ、ぽつんとあるんですよ。気付いたメキシコの皆さんが指をさして叫んで、銃を構える奴もいた。
そりゃそうだ、空中に扉だもん。でもホセが撃つな! と、銃を構えた人を殴ってた。人が殴られる音を初めて聞いて、むしろそっちのほうが驚いたな。
空中に現れたドア……超有名な「どこでもドア」を想像してくれるといい。色はあんな目立つピンク色じゃなくてどこにでもあるようなドア。ドアノブが回り――向こう側にいる人間はドアを押したため開かなかった――
日本のドアは外側に開くのが主流だが、アメリカなどは内側に引いて開くのが主流。だから日本人の私は大学に入ってすぐの頃、何度もドアの押し引きを間違った。
そう空中にあった扉を開いたのは私。
あの時カルテルの皆さん連れて来られた人たちの恐怖に満ちた叫びは凄かったね。大声じゃなくて、心の底から湧き出た声。私だけならまだしも(いや、私だけでも恐いか?)私の体をうねうねした影が包み込んでるんだ。
<旧支配者>の何かが私の側にいた。
扉を開いた私は一歩空中に足を踏み出すが、直後後ろに倒れる。いきなりこの高地に出たことによる高山病。足が空中でぶらぶらしていた。
―― ここよりも高いところで意識失ったから高山病になったんだ
まあそう言うことだ。
いきなりメキシコの高地に連れて行かれることが、蕃神の儀式を行う人間の選別なのだろう。
空中の開いたドアからぶら下がる【ここにいる儀式を行う人間の足】を全員で見上げる。どれ程の間見ていたか? 分からないが、私にまとわりついていた影がずるずると私を引きずり、そしてドアが閉じられ消えた。
気付くと周囲からは霧もなくなり、陽射しが私たちを照らし出している。
彼らにもの凄く恐がられるようになりました。
それと……未来の技術っていいよね。どこでもドアって、高地に出ても酸欠で倒れたりしないしねー。
こうして<旧支配者>と自分との邂逅を果たして、目的の場所に無事? まあ、途中襲われたりもしましたが無事に到着することができました。
儀式については詳しく書くわけにはいかないので――詳しく書けないことばかりだなー。でもグダグダ感溢れるこの話だから、それも味でしょう。
書ける範囲で書くと、辿り着いた先は巨大な袋小路状態で儀式用の台座があり、周囲には無数の骨が山積みになっている。ぱっと見は古い人骨なんだが、よくよく見ると最近の物が混じっていたり、人骨というにはおかしい物があったり。
私が必要とするのは”人骨というにはおかしい物”
人間の頭蓋骨(とうがいこつ)は十五種類の骨で構成されているが、儀式に使う頭蓋骨は二十七種類の骨で構成されている――この位で許しておいてくれ。
私は骨の山から儀式用の頭蓋骨を探し出すのだ。
骨の山をかきわけるもんだから、偶に骨が崩れおちてきて、
「あああああ」
叫ぶハメになる。
そんな埋もれた私を助け出すのがトラックに乗せて連れてこられた人たちとベラスコ。ホセは私から目を離さず、なおかつ帰りの足である車から離れず、連れてきた人たちに号令を出す。
マウロと瑞原がいなくなったお陰でベラスコが付いてきてくれたわけだが、ベラスコがしてくれた仕事をマウロがしてくれるとはとても思えない。そういう意味では屑どもいい仕事してくれた。これで見張りの少年と身の回りの世話をしてくれていた少女が生きていたら、言うことなかったがね。
屑は死ね! ……自分に跳ね返ってきそうな言葉でもあるが。ああ、ムネガイタイワー。棒読みに感じられるのはカタカナのせいでしょう。カタカナって偉大だね。
余談だが頭蓋骨が十五以上あり、明かに人間のソレじゃねえだろ! という頭蓋骨を外で見つけたら無視しておけ。自宅の天井裏や蔵にあったんだけど……の場合は、諦めろ。もしくはミスカトニック大学に持ち込んでも良いが、引き取ってもらえるかどうかは分からない。
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