君が消えた六月三十一日
[02]【色褪せない夢を見る】を知った経緯(まとめサイトにはない部分)
私は以前、同人二次サイトを運営していた。
始めたのは2002年の夏頃。本当に初めてで、まさに手探り状態。ホームページビルダーを使っていたのだが、それでも苦労した。
いまも然程知識はないが。
当然ながら、その頃はアクセス解析というものも知らなかった。
そのため自分のサイトが【色褪せない夢を見る】からリンクされたことは気付かなかった。リンク元解析から辿る……などということを知らなかった頃だ。
だから気付かなかった。なにより【色褪せない夢を見る】は同じジャンルではなかったので、当時ジャンル以外を巡らなかった私が気付くはずもない。
私がリンクされていることを知ったのは、同じく【色褪せない夢を見る】にリンクされ【色褪せない夢を見るの管理人】からメールを貰った水瀬リュリュさんが興味を持ち、リンクページを伝ってやって来て掲示板に書き込んでくれたからだ。
いまでは数は減ったが、当時は掲示板はどのサイトにも常設されていた。
私は掲示板に書き込まれていた水瀬さんのurlをクリックし、彼女のサイトにお邪魔し、そのリンクページから【色褪せない夢を見る】へと辿りついた。
たしかに【色褪せない夢を見る】のリンクページに、私の当時のサイト「華氏」のバナーがあり、しっかりとリンクが張られていた。
リンクページには私と水瀬さん以外にもう一つリンクが貼られていた。それが熊谷さんのサイトである。
「no banner」と書かれたバナーにリンクが貼られ、masterのところに”熊谷さとる さま”と書かれていた。私はなにも考えずにカーソルを合わせてクリックした。
現れたのは素人が撮影した人物写真。熊谷さんのお兄さんの写真で、サイトの管理人は熊谷さとるさん。お兄さんは行方不明で情報を求めていると書かれていた。
同人サイトだとばかり思っていた私は面食らった。
私は一通りそのサイトを見た。もちろん情報など持っていないので、コンタクトを取ることはなかった。
そして私は【色褪せない夢を見る】を見て回ることにしたのだが……。リンクページには「リンク報告は不要。だが報告してくれたら嬉しい。相互リンクも受けつけている」と書かれていたので、私のほうからも貼ろうとしたのだが少々問題があり、連絡してから貼ろうと考え掲示板に書き込もうとしたのだが……。
水瀬さんは書き込んでいたが、私には書き込めなかった。
【色褪せない夢を見る】には三つほど掲示板があった。一つはゲストブック、一行掲示板でレスはつかない。二つ目は通常の掲示板、レスがつくと説明書きにあった。
三つめは秘密掲示板でパスワードを知らないと入れないというもの。
三つめはどうしようもないが、残りの二つのうちどちらも書き込むことができなかった。
なぜ書き込めないのか? 当時の私には分からなかったので、次にメールを送ることにした。メールフォームがあり、そこに書き込んで送信ボタンを押したのだが――掲示板と同じで送ることができなかった。
私は【色褪せない夢を見る】にリンクを貼ることを諦めた。それというのも、サイト名も管理人名も分からないのだ。
リンクページには何も書かれていないバナーがあるだけ。
サイトをくまなく探したが、管理人名もサイト名も見つからなかった。
【色褪せない夢を見る】ではないのか? と聞かれそうだが、これはトップページの右上にあった一節で、サイト名ではないらしい。
呼び名がないとまとめられないので、熊谷さんがその一節を使うことにしたのだ。サイトアドレスに「distance」とあったので、それがサイト名ではないか? と思ったが、以前の【色褪せない夢を見る】を知っている熊谷さんがどうしてもと言ったので――私は傍観者なので、意見を否定することはなかった。
この【色褪せない夢を見る】は何サイトなのか? 不明であった。作品もなにもなくaboutもリンクが貼られていない。
日記もあったのだが「2002/08/20 ホームページ開設」と書かれているだけ。不可解なサイトにリンクを貼られたなとは思ったが、それほど深刻には捉えていなかった。
**********
当時の私はジャンル友との交流に没頭しており【色褪せない夢を見る】には一週間に一度足を運ぶ程度だった。メールフォームは送信を押しても動かず、水瀬さんの書き込みとそれに対する返信は増えているが、相変わらず私が書き込むことはできない。
掲示板には水瀬さんと【色褪せない夢を見るの管理人】以外にも書き込んでいる人たちはいたが、urlが入力されていなかったり、入力されていてもクリックすると「not found」であったり。
水瀬さんと私は掲示板に互いの作品の感想を書き込みあっていた。
ちなみに水瀬さんのサイトは一次創作サイトだった。普通の女の子が頑張る剣と魔法のファンタジーだった。あの頃は交流がメインだったので、読んで感想を書いて送った。水瀬さんは真面目で、私のジャンルの聖典(原作)を読んで、わざわざ感想を送ってくれた。感想をもらえると嬉しい。だから私も感想を返した ――
いまはあまり感想を書くことはないが。
そんな日々を過ごしていた私のもとに「初めまして、熊谷さとると申します」というタイトルのメールが送られてきた。
最初は分からなかったが、取り敢えずメールを開き、
「あのホームページにリンクを貼りかえしてはいけません」
目に飛び込んできた一文。
▼
初めましてFさま。
私は熊谷さとると言います。
あのホームページにリンクされている者です。
URL
▲
私は警戒せずにリンクをクリックし、失踪した兄を捜すホームページを見て思い出すことができた。
そしてメール画面に戻り続きを読んだ。
▼
あのサイトと相互リンクすると大変なことになります。あのホームページにリンクを貼りかえしてはいけません
▲
まったく知らない人から、連絡が付かない相手に相互リンクをしてはいけないというメールをもらった私の心境は ―― 混乱した。だが同時に納得できた。
なにがどのように納得したのかは不明だが、相互リンクをしないほうが良いと、別の誰かから言われたことで安心できたのだ。
その後、水瀬さんからもメールがきた。
水瀬さんにも熊谷さんは私に送ったのと同じメールを送っており、水瀬さんはひどく怒っていた。
水瀬さんは私とは違い【色褪せない夢を見るの管理人】と仲良くやっていたので、腹を立てるのは仕方ないとも言える。
▼
あんなに素敵な人のことを
▲
私は【色褪せない夢を見るの管理人】のことは知らないが、水瀬さんに適当に話しを合わせた。私は否定できるほど【色褪せない夢を見るの管理人】について知らないのだから。
自分語りが長くなったので、結論から言わせてもらうと、水瀬さんは行方不明になりました。さきほど確認しましたが、いまも行方不明のままだそうです。
これらについて少々事情を知っているまゆりが、佐倉さんのことを心配するのは、このことが原因です ――
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