貴方を抱いた日
ああ、もう忘れたけどさ
結構世話になったな
人間って本当に良くできてるよ
嫌な事ってかなり忘れる
いいことだけ何故か覚えている


でもそれって正しい事なのか?


人間は幸せな頃の記憶を残す事に必死になるだろ?
例えば結婚式のブーケを押し花にしたり
悲しい事は記録に残さないだろ?
誰も葬式の花を押し花にして飾ったりはしねえだろ


記憶に残さなくても忘れてしまわないんじゃないか?悲しい事や辛い事は


……なんで俺はてめえと一緒に居た、良い思い出を事細かに覚えているんだろうな


ああ、そうか


あんまり良いことなかったからか
……まあ、それでもいいさ

てめえの墓に花を添えるのは俺だ
俺はてめえより十五歳も年下なんだよ
だから


てめえの墓に添えられた花を全部押し花にして飾ってやるよ
え?
誰も来ないって


じゃあ俺とエルストとミゼーヌで飾ってやるよ


だから安心して死にやがれオーヴァート

novels' index next back
Copyright © Rikudou Iori All rights reserved.