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おむね様の過去[2]

「キュラ……」
「どうなさいました? 陛下」
「あの……余はキス下手か?」
「え?」

 陛下が真顔で僕に「余はキス下手か?」と聞いてきた。理由は解ってる。僕キスするの嫌いなんだよ。いや嫌いじゃない、たださ口が汚れてるっていうか汚されてるっていうか。
 歯磨きするとかうがい薬で消毒するとかいう問題じゃなくてさ……
 僕だって陛下とキスしたいけれども、このラティランに蹂躙された口で陛下のお口に触れるのは……

 僕が正妃になる前、まだ王城に住んでいた頃の話だ。

 ラティランが訪れたんだ。何時もみたいに胸を揉まれる! と思って、必死にガードしたんだよ。胸のガードに注意が向いて、首に手刀を落とされるなんて思ってなかった。
 意識を失って次に気付いた時は僕ベッドの上に転がされていたんだ。
「ラティラン! なんのつもりだよ!」
 体は縛られて自由がきかない。自分で自分を縛るのが得意なラティランは、他人を縛るのも大得意で、力が入らないように縛るから普通の縄でも抜けられないんだ。
 僕は仰向けに寝かせられていて、首のあたりがベッドの縁にあって首が垂直になっているような感じで、物が逆さまに見えてた。
 僕さ、なにをされるか解らなかったんだ。
 だって僕、お姫様なんだよ! 王女なんだよ! これでも幼いころから皇帝の正妃になるって決まってた箱入りの姫君なんだよ!
 まあ……箱入りの王太子は独学で変なこと覚えたけどさ。

 ラティランが、下半身裸で現れたんだ。

「やめてーラティラン!」
 貞操の危機じゃないとは思ったけど、なんか別のもっと嫌な危機だってことは解った。
 叫んだところで口に押し込まれた。
 僕なにされたのか全く解らなかったけど、徐々に自分の口にラティランの性器がねじ込まれて出し入れされていることを理解した。
 叫びだしたかったけど、口はラティランのもので塞がれてて、どうしよう! と考えて……混乱してたんだよ。
 男性器って急所とも言うじゃない?
 だからさ、僕思いっきり噛んでやったんだよ。そりゃもう容赦なく、噛み千切る勢いでさ。
 歯茎と舌、そして喉の奥に”どろり”とした嫌な感触の物が。そしてラティランが頭上で一言。

「最高だ……」

 人の口で余韻に浸ってるから、早く離れろ! って、噛んで噛んで噛んでたら、徐々に硬さが戻って来たんだよね。
 そこで僕思いだしたんだ。
 ラティランはマゾだったって。だから噛むと余計に……気付いた時はすでに時遅しってやつで、再度頭を掴まれて、僕の口に腰振ってきた。
 後頭部がベッドの縁に当たって痛かった。それ以外のことなんて考えたくもない状況。現実逃避ってやつだよ。
 ラティランはオーラルセックスで、思いっきり噛んで欲しという希望があったらしいんだが、あれでも一応王太子じゃない? だから誰もラティランが希望するほどに噛んではくれないから不満だったんだってさ。普通に考えたら当然だよね。
 命じられるままにやって間違いがあったら殺されるからさ。
 その不満で悶々としている時に、僕の存在に気付いてやってきた。

 あとで語ったのは「最初は無理矢理、次からは理由を説明して」……なんなの、このマゾ。

 とにかく意味不明な状態の僕と、噛まれまくった性器を手で押さえながら恍惚としているラティラン。
「これだ……これが望んでいた快感」
 僕の口の中は酷い有様。それ以来ラティランは味を占めて僕を縛ってベッドに置いては、口を蹂躙するんだ。
 僕だって一度失敗したら解るよ。
 だから二度目は、絶対に噛んでやるもんかっ! と耐えたよ。拘束されるのは身体能力の差から見て無理だから、出来るただ一つの抵抗さ。
 でもさ、嫌なことにラティランの方が上だった。
 仰向けに寝かされているから、僕の大きい胸も無防備状態。
「噛まないつもりだな。ならば!」
 ラティランは僕の服を引き裂いて胸を露わにして、乳房を握し揉むし、果ては乳首吸うし。腰は動かしたままで。身体能力の無駄使いってこういうこと言うんだろうね……。
「噛まないと、胸を揉み続け、乳首取れるまで吸うぞ」
「(やめてー!)」
 僕は屈して噛んだ。
 胸揉まれて乳首吸われるの嫌なんだもん。
 もうさ、二度と使い物にならないようにしてやるつもりで、思いっきり噛んだ。
 でもラティランの性器って、僕が本気で噛んでも血が滲む程度で、噛みちぎることは不可能だった。強いんだよな……体その物が頑丈でマゾ。

―― 極めしマゾはサドとなる! ――

 ラティランの座右の銘、誰の言葉かは知らないし、馬鹿馬鹿しいと思うけどその通りだとおもった。
 体を痛めつけられるのが好きで、相手に対しそれを力づくで強要する。それはマゾだけどサド以外のなにものでもない。
 父王は言わなかった。
 下手に申告して「では陛下の正妃にはできぬな。汚れたから余生はラティランのおもちゃとなり過ごせ」とか言われたらたまったもんじゃない! 口と胸はラティランに好きにされたけど下半身は守った。貞操だけは守れたってこと。そこら辺はラティラン頭良いからね、手は出さなかったよ。


 マゾは性交そのものにはあまり興味のないらしい。ただ最近ザセリアバ王女にプロポーズしているのは、リスカートーフォンの王女は締め付けが尋常じゃないと聞いたところに起因してるとか……僕も”ちらり”と陛下に聞いてみたんだけど、アシュレートも凄いとか。ぎちぎちとかではなく、膣そのものに攻撃能力が備わっているような感じだって。あの陛下がそこまで言うんだから、実際はもっと凄いんだろうなあ。


 話を元に戻すけれども、だから余計に言い様がなかった。
 そんなことが続いたある日、一方的な行為の後に半泣きになりなりながら、出来る限りの憎しみと蔑みを込めてラティランを見つめたら、
「くぉ……その蔑みの視線、それこそ僕が求めていた物だっ!」
 逆効果だった。
 また口に突っ込まれてさあ。もうさ……

 そんな数え切れないほどラティランに蹂躙された口で、陛下とキスする気になれないんだよ。申し訳ないじゃない。

「キスはその……しないと駄目ですか」
 僕だって陛下にキスしてもらいたいけれども、頭を過ぎるんだよ。ラティランの性器がさあ。失礼極まりないじゃない。あのマゾが汚しに汚した口なんて。
「いいや」
「陛下とキスするのが嫌なわけじゃありません。ただ……ちょっと恥ずかしいっていうか」
 上手く誤魔化すために、僕は自分の武器である胸を使うことにした。
 胸もさ、あんまり大きくなって欲しくないから陛下に触られるの好きじゃないんだよね。俗説だって言われても、実際僕の胸はラティランに揉まれて大きくなった。
 ほっといてくれたら、もう少し小さめだったと思うんだ。口以上に玩ばれた胸だけど、でも、胸なら……胸なら。
 陛下のお洋服を脱がせるように指示を出して、ベッドの背もたれに寄りかかり僕を見下ろすような感じにして、陛下のを両胸で挟み込んだ。
 ラティランのはこんなことする気にはならなかったけど(当人もこんなことは望まないだろうけれど)陛下のは凄く嬉しい。
「キュ……キュラ」
 陛下喉を鳴らして、僕の胸を見てる。
 胸の隙間から少しだけ顔を出している”陛下”を舌で舐めた……陛下がとても悦いお顔を。こんなに幸せそうにしてくれると、遣り甲斐があるよね。
 でもあんまり上手いと引かれるか……大丈夫か、僕口内にアレ咥えたことは何度もあるけれど、普通のはほとんどしたことないし、なんか自分からしておきながら恥ずかしくて……。
「す、済まん! キュラ」
 陛下は割合直ぐにってか、僕も吃驚するくらい早くに達ってしまった。
「いや良いんですよ。気持ち良かったですか?」
 何時もの陛下はもっと保つから……嬉しいよね。でもちょっと物足りない、陛下のこともう少しこう胸で……早く終われ! 生物としても終われ! と思ってたラティランの頃からは考えられない気持ちだ。
 当たり前って言えば、当たり前なんだけどね。
「そ、それはもう!」
 陛下は大喜びして僕の顔にかかったのを舐めるようにして、そのままキスに……なんか、流された形だけど、陛下とキスしたら今までのわだかまりがなくなった。
 もっと早くにしておけば良かったな。




「僕ので練習していて良かったな、キュラティンセオイランサ」
「君と陛下、全然違うから! 帰れよ! マゾ」



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