繋いだこの手はそのままに −71
ロガを宮殿に連れて来てから四日が過ぎた。ロガは初日の顔の治療の後、どっと疲れが出てしまい二日ほど寝込んでしまい、昨日からやっと復調の兆しを見せ始めた。
ボーデン卿のことをも心配しているようなので、回復後の軽い散歩ということでボーデン卿の元へと向かい二時間過ごして部屋へと戻ってきて、また直ぐに寝てしまった。やはり慣れない環境のせいなのであろう、ロガは随分と疲れやすくなっておるようだ。
多くの者が関係することを望んでおるのは解るのだが、もう少し落ち着くまでは何をするつもりもない。
何せ連れて来た日の夕方過ぎに高熱を出した。
顔を真っ赤にして瞳が熱で潤んでしまった姿を見てしまったので、環境の変化に慣れるまでは何をする気にもなれぬ。
慣れるまで時間がかかろうし周囲は焦るかも知れぬが、此処は余が確りとせねばな……別に確りとせんでもその……できぬの。むしろ確りとしたら……ま、まあそれは追々とな! 誰に向かって言い訳しておるのか、言い訳しておる余すら解らぬが。
「隣で寝てもいいか? ロガ」
「はい」
小さいロガを抱きしめて眠るのがとても楽しい。何時までもこのままで抱きしめて寝ていたいと思う程に。
そして四日目の朝が訪れた。
「もう少し時間を取りたかったのですが、四大公爵も我慢の限界のようで。各々のプライドもありますから、これ以上は」
デウデシオンが頭を下げて、どうしてもロガを出して欲しいと願い出てきた。ロガを連れて帰ってきてから、デウデシオンは頭を下げることが多くなった。苦労をかけている事を実感する。
「直ぐにでも挨拶を受けてやらねばならぬのを、四日も待たせたのだ。仕方あるまい」
皇族や王族以外の者が正妃になった場合、宮殿に入って直ぐに四大公爵の挨拶を受けねばならない。顔を見せる、という行為だ。
皇族や王族であれば生まれた時点で他王家に紹介を行っているのでしなくても良い儀式なのだが、ロガは奴隷であるのでせねばならぬ。当然この挨拶は『身分が低い者』に対して行われる為、日にちを延ばすことは好まれぬ。
奴隷などの階級から正配偶者になった相手に対する王家の示威行為なのだ。示威行為である以上こちら側の、特にロガの事情で引き伸ばすのは示威行為その物を危うくすることであり……要するに早くしないと堪忍袋の緒が切れてしまうので、その前に挨拶しようという事だ。
ただでさえ奴隷正妃の階級で揉めているのだから、頑張ってくれているデウデシオンのためにもロガに頼み込もう。今日一日頑張ってくれれば、後は一週間くらいゆっくりと休ませられるように余が取り計らうので。
「ロガ」
前もって連絡をうけておったのだろう、ロガは宝石で飾られた帽子を被り、薄い空色のAラインドレスを着ておった。
帝国では男の服と女の服という違いは存在しないのだが、ロガは小さくて……その王族と同じ格好をさせると貧相に映るそうで……元々180cmが小さいサイズでデザインされている服を170cmに満たないロガが着ると、デザインがどうのとか……可愛いのだ! 凄く可愛いのだ! 余が見る分には十分過ぎる程ロガは可愛いのだが、人前に出す時色々と問題になるのだと。
マントは身分で長さが制限されている、それも身長との比率で出される故に2Mの皇王族のマントの方がロガよりも長くなってしまって……やはり物足りないのだと。
それで長さ制限のない、過去の『女性だけが着ていた服』を着せることとなったのだ。ドレスの裾ならばどれ程長くしてもよいので。そうは言っても、ロガが歩ける限度という物があるので……色々苦労している。
「はい、ナイトオリバルド様」
手袋とショールをまとい、ネックレスとイヤリングで飾り、薄っすらと化粧をしているロガ。
可愛いぞ! 何かもう……大好きだ! 今更言う必要もないほどに、大好きだ! 落ち着け、シュスターク。一人で浸って感動しておる場合ではない。
「今日は余と共に王達から挨拶を受けてもらわねばならぬのだ。まだ慣れぬであろうが、ただ黙っておるだけで良いので共に来てくれ。あまり長引かせると王達のロガに対しての心情が悪くなる恐れもあるので。疲れるであろうが、今日だけは」
「とっても楽しみですよ。王様に会えるなんて思ったこともなかったから、皇帝陛下もですけれど。早くお会いしたいです」
そう言って笑ってくれておるのだが……嗚呼、ロガの笑顔が若干引きつっておる。
余に心配させまいとしておるのと、王に会うことに緊張しておるのだろう。
最大限余が注意を払わねば……だが、どのように注意を? 余は物心付く前後から王の上に立っていたので……。ロガ相手に緊張したことはあっても、王相手に緊張したことはない。
「不安になることはない。直ぐに終わるから。終わったらまたボーデン卿のところに行こう。そこで食事でもしよう。何が食べたい?」
ロガと四大公爵の対面なので、謁見の間ではなく応接室で行われる。
二人掛けの椅子に座り、召使達が服の端などを整えて退出する。
「難しいことはないからな。初対面行為だが、実際は四大公爵側もロガのことは全て知っておる。あれ達が知らねば余の正妃として認めるわけがない。だから唯の儀式だ」
「はい」
そうは言っても緊張の糸がほぐれるわけもなかろう。
早々に切り上げて、ロガを元気の元であるボーデン卿の元へと連れて行かねば。ロガに極度の緊張を強いて、体調を崩させることは四大公爵も望まぬであろうし。
「ケスヴァーンターン、入れ」
余が声をかけて、自ら扉を開いて傍に来るのが慣わしだ。
慣わしといっても、これを行ったものは過去二人しかおらぬ。皇妃ジオと帝后グラディウス。
最初の平民皇妃ジオ。彼女を正妃にしたのが賢帝と名高いオードストレヴ。賢帝はその知性を持って「前例がない」という典礼達の言葉を打ち負かし、四大公爵に文句一つ言わせぬ「皇族・王族以外の者を正配偶者に迎えるための儀礼」を自身一人で作り上げた。
……お、思えば凄い男だ。余はとてもではないが、思いつかない。
賢帝の作った規則を知っているからこうしていられるが、一から作れと言われたら全くもって無理だ。デウデシオンでも無理であろう。さすが平民を正配偶者に迎えると初めて決めた男は違う。
余はその財産の上に座り、こうやってロガを正妃にしようとしておるのだが……今、この段階になってはっきりと解るとは言えぬが、賢帝が苦労したのが何となく解ってきた。
そうだな、賢帝は一から全て作り上げ、数ある王女を退けて平民を正妃に迎えたのだ。
それに比べれば余は苦難の道を歩んではおらぬ。余自身が直系でないこと、ロガが初の奴隷であることも、賢帝からみれば苦難の道にはならぬであろう。そして、もしかしたら遠い子孫のための道を切り開くことになるかも知れぬ。
此処まで来たのだ、絶対にロガ、いや『奴隷』を皇帝の正妃に、それも最高の地位につけようではないか。何時か奴隷を愛する子孫が苦労せぬように、一つくらい道を造り残してやろう。
「ケスヴァーンターン公爵にしてケシュマリスタ王ラティランクレンラセオでございます」
ラティランクレンラセオは賢帝が作った書類通りの動きと言葉で挨拶を終えて退出した。さすがラティランクレンラセオ、全く隙がない。
「ロガ。震えておるが、大丈夫か?」
「……」
正妃の手を取り、額をその甲に軽く置く。という儀礼がある。
それを行った瞬間、ロガの体が硬直しラティランクレンラセオが離れた瞬間から、体が小刻みに震えだした。
退出するまでは何とか持ちこたえたが、ラティランクレンラセオが部屋から出た直後、歯の根も震えるほどになってしまった。
「思ったままを言ってよいのだぞ。此処には余しかおらぬからな」
肩に手を置き、頬に触れると今にも泣き出しそうな表情で、
「な、なんか……怖かったです。あの男の人」
声を震わせ、そう呟いた。
こ、怖いか……確かに見慣れねば怖いかも知れぬな。人間が持っていた美の極限を計算しそのまま映し出したものだから、裏側に潜む醜悪さもまた並ではない……なんだそうだ。よく解らぬが、美を追求した容姿であるが故に、それを受け入れられぬ者はその容姿に激しい嫌悪感を抱くらしいのだ。
余や王族などの階級ならば慣れてしまっているが、容姿自体が奴隷などの人間には馴染めぬことも報告されておる。
こればかりはどうにもならんしな、作った顔だから違和感も拭えぬであろう。人造人間の計算ずくで作り上げられた姿を「美」とするか? 「醜」とするか? どのように感じるかは自由であり、また「醜」に分類されたとしてもラティランクレンラセオの落ち度ではない。
「そうか。人に恐怖を与える容姿かもしれぬな。落ち着くまで待っておるから」
サイドテーブルにおいてある水差しからコップに水を注ぎロガに手渡す。今回はこぼさずに注ぎ、渡すことができた。
受け取ったロガも何時ものように笑い、水を飲み干して自分の側にあるサイドテーブルに置き、
「大丈夫です」
頷いてくれた。
「あと三名だ、頑張ってくれ」
全員同じ容姿だから、ロガを怖がらせてしまうかもしれないが、この先も付き合いのある王故に対面させないとな。同じ日に全て終わらせないと……色々あるのだ。
「ヴェッティンスーアーン、入れ」
「ヴェッティンスィアーン公爵にしてロヴィニア王ランクレイマセルシュですよ」
容姿が容姿なので、あまり長居はさせられないな……思っておったら、
「緊張を長引かせるのは私の本意ではありませんので。義理妹である女官長・メーバリベユを通して私に何でも命じてください。帝国宰相パスパーダ大公は陛下の腹心、私は正妃である后殿下の腹心ですので」
勝手に腹心宣言をして去っていった。
おそらく、メーバリベユを通じてロガのことはほとんど知っておるのであろう……ランクレイマセルシュがロガの腹心になってくれることは嬉しいというか、ランクレイマセルシュに後ろ盾になってもらわねばならぬのは事実だ。後で説明せねばな。
「ロヴィニア王はどうであった?」
同じ事をしてもランクレイマセルシュ相手では震えなかった。慣れたのであろうか?
「お顔は最初の人と同じ気がしたんですけど、最初の人と違ってナイトオリバルド様に似てるような。顔は違うんですけれどお兄さんって言われたら、そう思うかも……それに怖くなかったです!」
ほう! 良くぞ見分けた!
「あれはエーダリロク、銀髪の警官であった男の実兄で、余の従兄でもある。帝婿のデキアクローテムスの兄の子だ」
「そうなんですか! セゼナード公爵さんとナイトオリバルド様は従兄弟なのは女官長さんから聞いてました。あの方がお兄さんだったんですか!」
メーバリベユよ、ロガに家系図を教えてくれておるのか。感謝する……覚え辛い家系だが、何とか教えてやってくれ。解らなければ解らないで良いような気もするが……覚えていれば覚えていたで楽であろうから。
さて、ロガも笑顔であるから次の王を呼ぶか。
「アルカルターヴァ、入れ」
声をかけると、カレンティンシスの側近中の側近、ローグ公爵が扉を開き部屋には入らず廊下で床と一体化してしまうのではないか? なる程の平身低頭しながら、
「陛下、申し訳ございません。王が少々具合が悪く、エヴェドリット王と順番を交換していただけませんでしょうか?」
申し出てきた。
順番を変えるの、テルロバールノル側から申し出ておるのならば構わぬ。
「余は構わぬが、エヴェドリットの方は用意が整っておるか?」
ローグ公爵が連れてきたのだろう、ザセリアバの側近であるシセレード公爵が、同じく平身低頭しつつ、
「整っております」
答えた。
一度扉を閉め、ノックされるのを待つ。それにしてもカレンティンシス、無理してまで挨拶に来なくとも……とも言っていられぬか。
ノックが聞こえたので、合図をだそうか。
「ではリスカートーフォン、入れ」
「リスカートーフォン公爵にしてエヴェドリット王ザセリアバ=ザーレリシバという」
目が覚めるような赤を使った軍服を纏ったザセリアバは、どの王とも違う行進調の足音を立てて傍に来て “リスカートーフォンにしては” 最大限に大人しく挨拶をしてくれた。
「エヴェドリット王はどうであった?」
「すごく強そうな感じがしました。前の二人の王様とお顔は似てるけど、お洋服のせいかな? すごく違って見えます。一番男らしい感じがしました」
「そうか。凄いな!」
余はあまり見分けがつかぬのだが、ロガは随分とはっきりと見分けているようだ。
カレンティンシスが来るまで少し時間があるので、ロガと雑談でもするか。
「今までで何か聞きたいことでもあるか?」
「あの、ナイトオリバルド様。王様って挨拶する順番決まってるんですか?」
「決まっておる。この順番を変えると、争いになるほどに決まっておるのだ。一番はケシュマリスタ、これがシュスターの最初の部下になった一族。次に家臣となったロヴィニアでこれが商人だった。その次がテルロバールノル、宇宙連邦時代に王制に固執し続けた地球時代より続く最古の王家。そして最強の傭兵部隊を率いてこちら側に寝返ったエヴェドリットが最後だ。仲間になった順番で挨拶や呼び出しをするのが慣習であり、決まりであり、各々の矜持となっておる」
「寝返ったって……最後の敵エドレ・シェートでしたっけ? 寝返った頃はバレンス・シェート? だったけかな?」
「良く知っておるな! ロガ」
「ゾイが教えてくれたから。聞いた時は試験に合格できるほど頭良くないから必要ないと思ってて……ゾイが教えてくれたの、いっぱい覚えておけば良かった。でもナイトオリバルド様のところに来ることになるなんて、思ってもみなかったし」
「無理に覚えずとも良い。興味があらば覚えればよいだけだ。過去の争いなど、必死に覚えずとも良い」
えーと……ロガに何処まで教える? 我々は人造人間が祖で、人間とは全く違うことを……教える……教えたら嫌われそうだ。どうしよう……バレンス・シェートはともかくエドレ・シェートも、教える教えない以前に嘘を皆に教えておるわけであって。だぁぁ! どうすれば!
話をしているとカレンティンシスが来た様で、扉をノックする音が。ロガに何処まで教えるかは、一人で居る時に考えよう。今は先ず挨拶を終えてしまおう。
「アルカルターヴァ、入れ」
「アルカルターヴァ公爵にしてテルロバールノル王カレンティンシス」
「具合の方は良いのか」
今にも倒れてしまいそうな顔色をしておる。
聞いた所によると、デウデシオンと互角を張るほど怒って倒れてしまうそうだな。怒るなとは言わぬ、でも倒れるほど激怒するな。
だがもしかして倒れるほどの激怒の理由がカルニスタミアとザウディンダルの関係であれば庶子達を束ねている一応の責任者である余のせいであり……余が今度謝るから、その……な。
「ご挨拶に体調を崩してしまい情けない限りです」
「良い。体を厭えよ」
「ありがたきお言葉」
「体調を取り戻してから改めて余の正妃に挨拶するがよい」
ロガにとっても、カレンティンシスにとっても挨拶は短めの方が良いので簡単に終わらせた。
無事に挨拶も終了し “終わったぞ” と声をかけるとロガは大きな深呼吸をして、余の方を向き、
「私、失敗しませんでしたか?」
「立派な態度であった。見事だ」
尋ねてきたので、本心から感謝を込めて褒めた。
部屋に入ってこようとする召使を手で制し、少し話をして緊張を解させよう。最後のカレンティンシスをどう思ったかも尋ねておきたい。
「テルロバールノル王はどうであった?」
ロガは笑顔で不思議なことを口にした。
「あの王様だけ女の人なんですね!」
「…………え? 女に見えたか?」
皇族や王族は名前にも性差がないので、名を聞いただけでは男か女か解り辛いものが多いが、
「男の人なんですか!?」
カレンティンシスは男なのだ。
「男だ。王妃もおれば息子も三人おる。ゾイが働いておる貴族庁の長官にして、ロガの女官長メーバリベユの夫……一応夫であるセゼナード公爵が属する技術開発局の局長も務めておる」
先代王ウキリベリスタルの後を継ぎ王となり、職務もほぼ同じ場所の同じ地位に収まっておる。ウキリベリスタルが就いた役職でカレンティンシスが就いていないのは≪巴旦杏の塔≫の管理責任者のみだ。
これはウキリベリスタルが技術系の天才であったことと、エーダリロクも同じ天使……ではなく天才であることが関係しておる。
帝国最強騎士と同じで、才能が物を言うらしい。≪巴旦杏の塔≫の管理システムも技術革新をせねばならぬ。物が物なので独自の改良を加えねばならず、それはやはり独創性に富んだ天才が良いそうなのだ。
カレンティンシスは知識はエーダリロクと同じだが、天性の[閃き]というのがない。違うな、エーダリロクの閃きがまさに[何かが降りてくる]かの如しなのだ。幼い頃から知っておるが……ちょっと鰐に頭を突っ込む遊びを見せてくれて、余もやりたいと言った願いをかなえてくれ、エーダリロクが宮殿出入り禁止になったが、あれは余が悪いのであって……それはそれとして、エーダリロクが物を直しておる時の “感性” 間近で見ていると震えが来るほどだ。
何処が壊れているか、を直ぐに当てる。壊れている箇所を見つけ出すのが最も難しいらしいのだが、エーダリロクはそれが大得意だ。
直感的にそれを見つけ出し、最良の方法で直す。あの一連の作業は見る価値がある。だがあまりにも天才過ぎて、局長は向かないらしい。人を束ねるのと才能は別物だから……才能も束ねる能力も余には……。
「すみません! 何か女の人に見えちゃって。内緒にしておいてください!」
「気にするな。綺麗な顔立ちをしておるから間違え……」
他の三人は同じような顔立ちだが男だとはっきりと解っておったのだから、顔で判別したわけではなかろう。
「テルロバールノルの王様って、ザウさんのお兄さんなんですか?」
「…………ん?」
「黒い髪で細身の人、ザウさんですよね。ザウディンダルさんでしたっけ?」
「ザウディンダルだ、ザウでも良いのだが。あー……テルロバールノル王の実弟は “カル” こと、カルニスタミアだ。両親とも同じ兄弟だが似ておらぬか?」
言いながらだが、カレンティンシスとカルニスタミアは全く似ておらぬなあ。あの二人並べても、兄弟には確かに見えぬ。
「言われてみれば。ザウさんとカルさんも似てますよね! 私ずっと姉弟だと思ってました!」
「えーと、多分遠縁の親戚にはなる筈だ。大体皆、遠縁の親戚にあたる……ええ? 姉弟?」
「また変なこと言っちゃいましたか?」
「ザウディンダルは余の異父兄弟、父親が違うが余の兄だ。カルニスタミアよりは年上だが」
「じゃあ、ザウさんのお父さんはセ、セボリー、セボロー……」
「セボリーロストのことか?」
「はい。セボリーロストさんなんですね?」
「違うのだ。あの、異父というのは正式な配偶者の子ではないことを指してな……」
ことごとく間違ってしまったロガは顔を赤くして「きゃー恥ずかしい」と言いながら小さくなってしまった。その仕草も可愛いな。
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