黄昏ニ堕ル丘 − PROLOGUE

我が明けの明星よ 我が宵の明星よ 

               我はその星に祈り

                     我はその星となりて
堕る


 捕らえられた男が男の前に引き出された。血を流した男が、最後の呪詛を叫ぶ。男の国を滅ぼそうとしている男に向かって、叫ぶ。
「我々を滅ぼしていいのか? 我々の国を滅ぼせば、もう滅ぼす国はない。征服国家よ、征服する国は残っては……」
 男は空を指差す、国を滅ぼそうとしている男は空を指差す。
「心配していただかなくとも結構だ。征服国家の行く末を知るものは、征服の血を引くものだけ」

「エヴェドリット!」

 何時の頃からか“征服”と同意語になった、その名前

“あの日”から五年、エヴェドリット王国は再び銀河を統一した。エヴェドリット=バーローズ王朝の始まり

かくて頚木を放すなと。


「いく事を許しますよ」
 皇帝は、男に告げた。
「もう……暫く此方にいる事をお許し願いたい」
「私としてはずっと居て欲しいのですから、許しもなにも御座いませんわ、父上」

我等、血と改竄と歴史と欺瞞の統制者なり、忘れるな。


「急いだつもりはなかったのだが」
 男は約束を守らないで済むように、前線に立ち戦い続けた。その結果
「五年で統一か……お前が生きていれば、二年で統一をみただろう……覇者皇帝よ」
 あの星が堕ちるまで、私は生き続ける

我が明けの明星よ 我が宵の明星よ 

               我はあの星に祈り

                     我はあの星とともに
堕る

貴方が私の死を堕とすまで

novels' index next back home
Copyright © Rikudou Iori. All rights reserved.