君雪 −00
 私は、絶対戦死すると思っていたのだが

 無数の散らばる紙と、崩壊しかかった文字
 これが一国の国王だった男の字か? 大昔の教育も受けない王でもあるまいし
 お前は最高の教育だって受けただろうが
 無くなってしまったのだろうが

 紙に書かれている文字が腹立たしい

 お前はどうしてこう……
「明日、雪合戦しようね」
「私とお前で?」
「うん」

 ああ、イライラする

 お前は脆弱な生き物なのに、寿命だけが長い
 無駄に生きてどうする
 お前なんか、即刻死んでしまえばいいのだ

 死ななくていい

 散らばる下手な文字
 そこに綴られている名前

 クロトハウセ大公
 ケセリーテファウナーフ・ダイシュリアス・アウグスラス・ゼウフィレティ・シュスターヌ

 必要ないと、必要ないと
 何回言えば解るのだ
 私は戦死する
 だから忘れろといっただろうが
 覚えておく必要など無い
 あれ程大好きだった『王妃』も忘れてしまったであろうが
「忘れないように、毎日書いておくから。絶対に忘れないから」
 要らない、要らない
 そんなに必死に覚えておこうとするな

「どうしたの?」

どうしても忘れないと言い張る強情なお前が悪い、カウタマロリオオレト


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