Alternative【あとがき】

 続きはまだまだあるのですが、いったんここで終わりに。
 卵を産むのはまだまだ先のことです。気がむいたら書くという、いつも通りのスタンスです。


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 むかしむかし、あるところに、容姿は触れないでおきますが、まあ普通の女の子がいました。幼い女の子の多くが夢見がちであるように、その女の子も夜空を眺めて夢を見ながら自分が主人公としかいいようのない話をつたなく紡いでいました。
 他の子と違うところは「インディアスの破壊についての簡潔な報告」を読んでいたことくらいでしょう。
 ごくごく有り触れた就学前の女の子がラス・カサスのアレを読むはずないだろう! そう言われそうですが、他人と比べたことがないのでわかりません。
 当時の夢想について「なんかヤバイモノ夢想しなかったか?」と聞かれたら、成長したかつての女の子は「あなたは”さとり”じゃなくて幸せだったね」と答えることでしょう。

 話が逸れたように見えますが、べつに逸れてはいません。

 その女の子も異世界にトリップしたら、どーの、こーの……という物語を読み、自分が同じ立場になったらと……考えました。考えるのはだいたいテスト期間中です、宿題提出期限の前日です。
 異世界に連れ去られる女の子は、気立てが良かったり、料理が上手だったり、裁縫が上手かったり、おばあちゃんの知恵袋に詳しかったり、頭が良かったり、”よく見ると”もしくは”磨けば”美人だったり……です。最後の項目はどうしようもないとして、その前の項目をノートに書いて冷静に吟味しました。
 女の子はおばあちゃんっ子ではなく、気立てもよくなく、料理は食べるのは好きだが作るのは嫌いで、裁縫は「いまここでこの針と糸とフェルトと共に滅びるがいい! 宇宙よ!」とリアルで叫ぶくらいに嫌いでした。
 ああ、これでは異世界に呼ばれても、なんの特技もなくあぶれます。
 どうしよう……と、考える必要もないのに女の子は考えました。明日のテストのことを考えた方がいいんじゃないのか? と、現実に戻るようなことはしません。
 そして女の子は一つの答えを出しました。

「戦争に勝てる武器を作れたら、生き延びられるんじゃない?」

 女の子の発想はずれていましたが、夢想というのは突っ込みがは入らないので、角度にして1度でもずれたら最後、目的地から大きく外れてしまいす。ですが、当人はなかなか気付きません。
 女の子はいろいろと考えました。
 火縄銃程度なら中世風の異世界にもありそう――
 拳銃? でも火薬と弾丸が――
 ライフルは……スコープが作れなさそう――

 女の子は大雑把なので細かいものなど作れません。いまはカラシニコフの設計図など簡単に手に入りますが、昔はそうでもありませんでした。
 そして女の子は考えて考えて……

 異世界に鉄があるとも限らないし、火薬があるとも限らない。異世界に絶対にあるものはなんだろう? …………そうだ! 水がなければ生きていけない! 私が呼ばれる世界には確実に水がある。となれば答えは一つ……水素爆弾だ!

 (水素爆弾には鉄も火薬もあれもそれも必要ですが、当時のその子には分からなかったようです)

 こうして女の子は、水素系爆弾の作り方を独学で学び……どこまで行ったか? それは教えられませんが、女の子が成長し振り返ったときに、彼女は自身の到達地点を見て気付いたのです。

―― 嬉々として水爆作って戦争煽りそうな女なんて、誰も召喚しないよな ――

 こうして女の子は自分が物語りには登場しない存在であることを知り、二度とそのようなことを考えることはありませんでした。


【あとがき・終】