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 以下の者を謹慎七日間とする。
・ ……
・ カミラ・ゴッドフリート
・ ……

「ゴメン! カミラ!」
「いいえ、良いですよ」
「本当にゴメン!」
「それに私のせいで告げ口されたようなモノですから」
「そんな事ないよ、本当に」
「もう良いって。それに街中はお祭り気分ですから、皆で遊びに行きましょうよ」

 謹慎処分で済んだのは、大学長が開明的だったからなんでしょうね。それにしてもキャサリンときたら、私に対して復讐をしたいのなら、私個人にすれば良いものを。

 事の始まりは、大学構内にある食堂に設置されたテレビに流された速報。“ラニエ妃が男児を無事出産”のテロップ、そして切り替わる番組。良かったですわね……から始まったのです。話の流れは陛下、そしてラニエ、最後に私、インバルトボルグの事です。
 殆ど公衆の面前に出る事のない私に対しての意見は
「大体気が強かったり、性格が悪かったりよね。皇后さまもその類なじゃないの? だから陛下は別の女性を手元に置くんじゃあ?」
 その認識を聞いた時、頭の奥が痛くなりました。何もしていないのに、悪女のように言われています。
 原因は何処にあるのでしょう? そしてどうしたら、少なくとも言われなく悪い后だと言われ事がなくなるのかを此処で聞こうとしたのです。みな次々と喋ります。
「性格が悪いんじゃなくて気位が高過ぎるって噂だよ」
 気位の低い后ではいけないと思います、これは却下ですね。それにしても、何処からそんな噂が?
「全然陛下に媚びないらしいよね。まるで皇帝にしてやったのは私だ! 的な態度を取ってるとか」
 ……そんな態度は一度も取った覚えは無いのですが、それに私がいなくても陛下は陛下となったと思うのですが……皆はそう思ってはいないのでしょうか?
 話を纏めると、どうも私の態度に皇族特有の高慢さがあり過ぎ、下層出身だった陛下にはとてもではないが相手にしたくはないと思われている……そう感じられているようです。
 私としては結局的に媚びるのは必要ないと思いますが、歩み寄るというのは必要かと思いました。一方的に歩み寄っても仕方ありませんけれど。
 そしてこの会話をキャサリンが報告して(ファドルが教えてくれました)謹慎処分となったのです。私の悪口を(悪口という程ではありませんでしたが)私の前で言って、私は許しているというのに謹慎処分とは。むしろ、皆に悪い気がしてなりません。
 それでもこのくらいで済んで良かったようです、軍事学校でしたらこうは行かないようですが。
 そして私はこの会話で得たものがありました、陛下のことです。私は陛下が“伯爵の庶子”であるくらいしか知らなかったのですが皆は色々な事を知っていました。むしろ知らない私の方が驚かれましたが……。陛下は伯爵の庶子なのは間違いないのですが、そのお母様が『場末のストリッパー』だったそうです。
 この女性には陛下よりも年上の息子が一人いて、その息子の父親は当然解からない……始めて聞く事ばかりでした。
 ところで場末のストリッパーとは一体何の事でしょう?
 困った時はダンドローバー公です。訊ねてみると、困ったような顔をしながらも答えてくれました。当然、陛下の兄上の存在も知っていました。
 兄上は、陛下が実権を握った際に侯爵に叙されたのですが、自分には合わないとそれを返上して戻っていったそうです。
「何処で?」
「繁華街で酒亭を開いております」
「帝都の?」
「はい、そうです」
「……連れて行ってください、デイヴィット」
「ですが……インバルトボルグ陛下が足をお運びになるような場所では」
「連れて行きなさい、デイヴィット」

こういう所が高慢なんでしょうか? ですが、こう言わないと従わないのも事実なのです。

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