PASTORAL −46
「ルライデ大公・デルドライダハネ王女特別編−王か王妃か王婿か」
 トコヤマさんは電気鰻……間違い、電気羊、完全機械。それに羊の毛を被せているんだそうだ。ちょっとした戦闘能力も持っているので、あの悪党達も「あの羊がいない」と口走ったらしい。

 何故俺を追い回して……悪党に見えたのだろうか? だとしたら落ち込む……。

 それにしても、こういう型の羊って始めて見た……昔は結構作られてたらしいが、最近は作る人もいない。こういう電子工学……ロボット工学系の人は全員、帝国の機動装甲研究所に送り込まれるから。
 ランチャーニさんは、どちらかというとガラクタから何かを作り出すのが好きで、機動装甲はあまり好きではないそうだ。気持ちは解かるけどね
「すみません。機動装甲が帝国を守っているのは重々承知です。彼等がいなければ私なんかが此処で遊んでいられない事も」
「構いませんよ」
 年に何人か「機動装甲の研究をしたくない」って学者が現れるらしいけど、その後は俺も知らない。
 で、俺は今何をしているかと言うとランチャーニさんを自宅に送っていっている。
 途中でサダルカンの一党に襲われたら困るからな。手に負える範囲は人助けを……墜落船のときは悪かったとは思うが、俺にも理由があるので。許してくれとは言わないが。
「サダルカン達が来てから、みんなで一緒に住んでるんです」
 そうだろうね、あの手のは一人暮らしとかをピンポイントで狙うから。トコトコと電気羊と学者風男性(めがねかけて、白衣っぽいものを着ている)と俺が、未開の惑星で並んで歩いている姿。
 変なような気もするが……
「あの宇宙船です」
 ランチャーニさんが指差した先にあったのは、小さな医療艇。その周囲にテントなどが張られてる。そのテントから一人の少女が飛び出してきた
「ランチャーニ! 何処に行ってたの!」
 いかにも農家の娘、ってカンジだけど悪くは無い。彼女の心一杯の心配を受けたランチャーニ氏の言葉は
「あっち」
 “あっち”で済むのか? それで終わっちゃっていいのか?
「その人誰?」
「僕を助けてくれた人です。先ほど撃墜された宇宙船の唯一の生存者なんだって」
 彼女、凄い顔で俺を上下舐めるように見るんですが……なんでしょう。
「嘘でしょ? 全然怪我してないじゃない」
「凄い強いんですよ。サダルカンの部下七人を一度に倒しちゃったくらいですから」

 あれは強くなかったので。

「此処で失礼します。サダルカンの一味は何処にいますか」
「何をなさるんですか?」
「奴らを倒します。急いで帝星に戻らないといけませんので。あそこに船があるというのならば、行って倒して宇宙船を強奪します」
 此処でのんびりしている訳にはいかないんだよ! 早めに帝星に到着しないと。
 ランチャーニさんと、娘(カルミニュアルと言うらしい)に『無茶な事しないの!』と引き止められる……そのうち他の人もテントから出てきて、止めなさいと……いや、此処で黙っているわけにはいかないのですよ。
「何の騒ぎだ……見慣れない顔……」
 医療艇から出てきた、これまたお医者様! としか言い様のない男性と、その脇に立ってる……多分軍人だな、黒髪を短く刈り込んだ男。
「この人がサダルカンの住処に殴りこむって!」
 医療艇からはその二人のほかに、凛とした青年と人が良さそうな青年、人の良さそうな青年に良く似た少女が現れた。その凛とした青年に質問をされた
「おいおい……って、あんた何処から来たんだ」
 墜落した宇宙船から脱出したんだって……もう何度も説明しているような気がするんですが。
「嘘だろ?」
 説明したのですが、信じてもらえなかったらしい。困ったものだ……。
「本当だろうな」
 凛とした青年の否定を、元軍人らしい男が否定した。
「まさかこんな辺境でお会いするたあ、思いもしませんでしたよ。ガラテアの皇子」
 やはり男は軍人だったらしい。ただ、俺は彼が誰なのか全く解からない。あと、医者も俺が誰かはわかったらしい
「皇子殿下が何でこんな所に」
 男には色々と理由があるんですよ……妻の浮気相手が父親だったり(いや、向こうは父親が本命だろうが)羊に突然追いまわされてみたり、それとかアレとか。
「ガラテアの皇子って誰だよ? ラウデ」
「現銀河帝国皇帝サフォント陛下の弟君さ」
 ラウデという軍人らしい男の言葉に、周囲がさぁーと引いていく。別に、怖い生き物じゃないんですけど、俺。……兄弟は別ですが、俺は別に怖くないですよー!
「嘘だろ?」
「本当だよ、サンティリアス」
 凛とした青年はサンティリアスというらしい。ふ〜ん、中々綺麗な名前だね。側にいた、カルミニュアルが俺の袖を引張って
「ほ、本当なの」
 凄い顔で尋ねてきます。此処で嘘をつくわけにもいかないだろうな。むしろ此処で嘘をつく必要がないから、通信機も何もないみたいだし。
「はい。ガラテア宮中公爵エバカイン・クーデルハイネ・ロガ・サフィス・ベルレーヌ……でした。現在はサフィス・ベルレーヌではなく、フェーサレロ・イネスですが、確かに銀河帝国第四十五代皇帝サフォント陛下の異母弟です」
 音立ててみんなテントの中に入っちゃった……うわぁ……そんな怖い顔してるか? 俺。
「あのね! あの! この人世間からずれてるから! 許してくださいって! ほら! 頭下げなさい! ランチャーニ!!」
カルミニュアルがランチャーニの頭を掴んで思いっきり下げさせる。
「す、すみません。トコヤマが皇子の事追い掛け回して!」
「トコヤマじゃなくて! アンタの事よ! お話なんてしたら処刑なんだから!」
 ……どんな生き物ですか、俺?
「そんな事ありませんから。それでは、失礼いたします」

取り敢えず、引き止める人がいなくなったので、サダルカン達を倒して宇宙船強奪する!


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