ビーレウスト=ビレネスト王子が
入院することになりました
― カレンティンシスアンケートのお礼 ―

 事の始まりは「ザウディンダルがエーダリロクを連れてビーレウストに頼み事」をしに来たことから始まる。
「ビーレウスト、チンコ貸して!」
「貸すのは構わねえけど、どうやって使うつもりだよ」
 チンコの一つや、持っていたら二つくらい貸すことくらい何とも思わない男は「お願い」なザウディンダルと、嬉しそうなエーダリロクを交互に見ながら内容を確認する。
『デウデシオンに良い気持ちになってもらうんだ!』と日々研究を惜しまないザウディンダルと、巴旦杏の塔の管理者として、両性具有の機能カタログを見て “こんなのがあるぞー” と軽い気持ちで教えたエーダリロク。
「あのさ、これ」
 妻とアレして見事にロヴィニアになった男が持ってきたのは『足コキ』

 解らない人に説明するのも憚られるが、手でやるところを足でするという事だ。それ以上の説明を求められても困るし、他人に聞いてもいけないことだけはフォント変えて書いておく。

「その練習台になれってことか」
「うん。足は自分ので試せないからさ」
 性的なことに関しては繊細なデウデシオンに何か変わったことをする際には、一度試してみる必要があった。デウデシオン本人は、何をされても平気と言えば平気だが、平気でないと言えば平気ではない……面倒な生き物である。
「練習したいんだってさ。それで俺は必要な道具を用意してきた」
 断る気はさらさらないビーレウストは自分のベルトに手をかけて《貸して欲しいと依頼されたもの》を取り出しにかかる。
「待っててくれ、足洗ってくるから」
 ザウディンダルは浴室へと走っていった。その後ろ姿を見送りながら、
「帝国宰相は幸せ者だな、エーダリロク」
「本当にそう思う、ビーレウスト」
 二人は足洗ってくるといったザウディンダルを待っていた。浴室から出ていたザウディンダル、上半身は変わりないが、下半身は下着以外全て脱いでいる状態。
「ザウディス、来いよ」
 エーダリロクに呼ばれて近寄り、必要な道具を受け取って履く。
「絹の靴下ねえ」
 絹のニーソックスを履いて準備完了。ビーレウストはソファーに座り、ザウディンダルはテーブルに腰掛けて向かいあい、脇でエーダリロクがやり方を映像とともに説明。王子がそれでいいのか? と思わなくもないが。

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「なんか憎たらしい」
 それを知ったカレンティンシス。
 ちょうど事が終わったあたりに、ビーレウストの所に部下のエーダリロクが訪問していると聞いたので、会議に出席しないエーダリロクに話しておきたい事があると足を運んで……

見てしまったわけだ

 間の悪い人というのは、本当に間の悪いところに出くわすものだ。
 「帝国宰相は幸せ者だな」とビーレウストが言ったあたりから聞いていたので、ちょっと思うこともあったらしい。
 王になるべく育てられて、君臨し、銀河一強情と言われる “ヒステリー持ち” の男は、年下の自分より格下の男に奉仕しようと考えたこともない。情夫を自認するビーレウストも、そんなことは気にしていないし、期待もしていない。
 気にしないのは当然だが、期待しないのはカレンティンシスが根っから不器用なのが解っているからだ。
『あの餓鬼め、好さそうな顔しおって……』
 実際良かったのだから、いい顔してもなに問題もないのだがカレンティンシスは腹が立った。
「ぐあぁぁぁぁ!」
「どうなさいました?」
 側近は驚きはしたが、何時ものヒステリーだろうと軽く受け止める。
「……ラティランのところに行ってくる。誰も付いてくるなよ」
「え? あの! カレンティンシス殿下!」
 周囲の止めるのも聞かずに、もっとも危険な場所へと向かう。カレンティンシスの突然の訪問を聞いたラティランクレンラセオは、少しだけ首を傾げるも “男が出来て落ち着いてきた” カレンティンシスの訪問を受けた。
「お前から私のもとを訪れるとは珍し……」
「チンコ貸せ!」


 酸の雨降る金星で、彼が現れるのを待っていた
 羽を持つ美しい男であり、女
 醜悪なる女であり、醜悪なる男でもある


 人狂わす金糸のような波打つ髪と、硬質な白さを持つ肌に相手と繋がる瞳。
 人造人間の末裔は、最古の王家の末裔の目をのぞき込む。その間も、女と男の顔を持つ永遠の友は語る。
「チンコ貸せ!」
「……」
 大体のことは解ったラティランは視線を逸らした。腕を組み視線を逸らしてしまったラティランにカレティアは叫び続ける。
「チンコ貸せ!」
 見た目の美しさを完膚無きまでに叩きのめすカレティアの《チンコ貸せ》攻撃に、ラティランは微妙な顔になり、そして断った。
「断る。というか、私とお前は性的に互いで達してはいかんだろう? 忘れたのか」
「忘れておった!」
 間髪入れずに返ってきた答えにラティランは、カレティアとの長い間の歪んだ関係に変化が訪れた気がした。もちろん修正されたのではなく、別方向に撓んだような。
「……そうか。お前、若い愛人が出来て馬鹿になったな、カレティア」
「馬鹿になっただと? 貴様もともと自分以外は全員馬鹿! 賢いのは自分だけ! ひれ伏せ愚民ども! という思想の持ち主だろうが」
「確かにそうだが。それにしてもお前の馬鹿さ加減はどうかと」
「煩い。背中を向けろ! よく考えたら私は達しないのだから平気だ。背後からお前を足で挟んで試す」
 言って椅子に腰掛け “さあ! 儂の上に座れ!” と叫ぶ男に諦めるように説得するのは中々に大変なこと。
「後背足コキか? ……あのな、カレンティンシス」
 カレティアの足の長さからすると問題なく足はラティランの《ちんこ》に届くが、届いたからと言ってどうなるものでもない。
「座れぇぇぇ!!」
 靴を脱ぎ始めたカレティアを前に、ラティランは今まで持ったことのない感情がわき上がってきた。

《箱入りで育てた妹がエロ覚えて語ったりすると、兄はこんな気分になるのかもしれないな》

 実弟全員殺害した男は、そんなずれたことを考えながら、かつてこれらの行為を必要以上に欲することなかったカレティアを懐かしみつつ何とか説得を繰り返した。
 その後ラティランはカレティアの説得に無事成功し、自分が足コキの練習台になることを逃れ、そのままカレティアをビーレウストの元へと送りだす。
「ふぅ……死なぬといいなあ、デファイノス伯爵」
 カレティアの不器用さを思い出し、ラティランは窓の外を眺め時間差で大笑いを始めた。
「まーた悪いこと考えてんだろうなあ」
 贈り物を届けに来たキュラティンセオイランサは、その笑い声を聞きながら “知らないがその笑いの対象者” に同情した。もっとも後で対象者が「ビーレウスト」と知ったところで、その同情は綺麗に吹っ飛んだのだが。


 そんなラティランの笑いなど知らずにカレティアはビーレウストの寝室へと向かい『足でやってやる! ありがたく思えぇぇ!』と叫び、情夫は情夫らしく主に従いその部分を自由にさせたところビーレウストは違う方向で違う世界を見た。

 悪気はなく、むしろ真剣に自分の男性器を踏みつけるというか、踏みつぶしたカレティアの肩に手を乗せて立ち上がり、一人歩いて医局へと向かう。

− 両性具有ではなくても危ない所でした −

 そんな言葉を聞いて意識を失ったビーレウストがベッドで目を覚ましたのは、何か “生ぬるい物” が顔に落ちてくることに気付いてのこと。ふと目をあけると、そこには自分をのぞき込むようにして泣いているカレティアの姿が。
 だが人間は泣くと鼻水も一緒に出てくるので……
『えっと、これ鼻水? それと涙? いや、両方か』

 情夫というのも大変なものである。主が主であると特に


《終》

アンケート回答ありがとうございました


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「エーダリロク、失敗したみたいだ」
「悪いな、ザウ。わざわざカレティアが見ている前で、嫉妬あおる為にやってもらったってのに」

裏で操っていたのは親友だった

「いや、そりゃ構わないけど……また、次も何か考えてるのか?」
「一応。次はカルニス使うから」

まだ何かするつもりなのか? エーダリロク

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