ALMOND GWALIOR −14
 両性具有って凄い小食なんだよね。あ、小食とはちょっと違うか[少ししか物が食べられないのに、食欲は人並み]
 『少量の食事で飼っても死なない』のがウリだったからさ。
 昔は宇宙を行き来するってのか時間がかかる仕事で、その間船員の性処理をさせてたのが両性具有。一体飼っていれば男も女も満足させられる、少量の食事で死なないから、とっても効率がいい。
 実務用両性具有と趣味用両性具有は少々性能が異なったらしい。大まかな所は同じだけれどもね。
 それにしても実務用って言葉は笑える、作った本人を目の前にして大声で嘲笑してもし足りないくらいに笑えるよ。
 今になっちゃあ、不必要な事ばかりだけど。
 苦しいらしいよ。脳は「もっと食べたい」と指示を出すのに、身体が受け付けないってのは。貧乏ならそれでいいかも知れないけど、貴族が食べる物に困るってことはないからさ。
 パーティー会場なんて最悪らしいね。事前に食事をとって出席しても無駄。多数の料理を前に脳が刺激されとても食べたくなるけれども、その刺激に負けて食べてしまえば後は吐くだけ。
 体質的に決まった量しか食べられない。体と脳の均衡が全くとれていないで、慢性的な飢餓状態から生涯逃げることはできない。
 全くなければ良いんだけれど、睡眠欲と食欲と性欲の三大欲求。性処理玩具から性欲取ったら、唯の木偶。
 反応のない体で楽しむのを好む人は、呼吸したり瞬きしたりする不完全な木偶よりも、死体のほうが断然いいんだってさ。
 殺せば出来上がるんだから、そりゃまあ簡単だろうね。木偶が好きなひとなら呼吸音も心音もいらないものね。
 性欲は取らなかった、そして食欲も強く残ってる。
 だから大量の料理を見た後、我慢できなくなる。その湧き上がってくる食欲を抑える為に、挿げ替える為に両性具有は性欲に走る。
 両性具有の≪淫乱≫は食欲の代替であることが多い。勿論、元来の性欲の強さってのもあるだろうけれど。
 それが極端に強く出たのが先代の三十六皇帝ディブレシア。あの九歳の初産から二十四歳で死ぬまで子どもを産み続けた男を切らしたことのない皇帝は、まさに人間が考えた≪公衆便所≫そのものだったんだろうさ。
 でも作った人もこうなるとは思ってなかっただろうね。ディブレシアのような異常性欲を持った人造人間が人類の頂点に立つことになるなんて。
 搾取されている一体の人造人間は不憫だ、でも搾取する側に立った一体の皇帝の恐ろしさ。権力を持った異常性欲は人々を次々と性行為で殺してゆくなんて、作った人は考えなかったに違いない。
 『人間の男』が『女の皇帝』に蹂躙され搾取され死んでいく様は、人々が思い描いたサキュバスのようであり、想像もしていなかったことだろうね。サキュバスは夢のような時間を少しはくれるらしいけれど、あの先代皇帝ディブレシアは万力のようなソレで引き千切ることを繰り返して遊んでいたそうだからね。
 何度やっても締まりの良いなんていう都合の良い性玩具を作るから、変異を起こしてそんな目に遭うんだよ。過去の人間の愚かさの代償を彼らは男性器で支払ったってとこだ。
「ビーレウストだな。三人で食うか」
「いいね」
 話はずれちゃったけど、ザウディンダルは大量に食べられない。だからカルニスタミアは一緒に食事をする時、前もって食事を終えてから一緒に食べる。
 カルニスタミアはザウディンダルのこと好きだから、一緒に食事をするのが楽しいんだけど、ザウディンダルが自分に合わせて少量しか食べないカルニスタミアを怒るから「前もって食べてきた」ってことにしてる。それが嘘だとザウディンダルが怒るから、本当にちゃんと食べてから向かう。
 目の前に大量に料理があれば、食べたくなって辛い思いするのは自分なのに……両性具有で特別扱いされるのも、特別な処置を取らなきゃならないのも嫌みたいだ。我侭といえば我侭だけど、当然といえば当然なんだろう。

 普通に、同じに扱って欲しいのさ。皇帝のように、王のように扱って欲しいって言うわけじゃない。人のように扱って欲しい、普通に。

「ビーレウスト」
「もう一人目の女は終りなのかい」
「ああ。昼飯食ったら、久しぶりに帝君宮に戻る」
「アルテイジアも待ってるだろうな」
「僕とカルニスタミアは昼食取るけど、君も一緒に来るかい?」
「行く」


 普通が難しいのは解っているけれど、願ったって良いじゃないか。願っているだけで口に出したりしてはいないんだからさ。
 誰も僕が普通を望んでいるなんて知らないし、僕だって自分の人生が普通で終わるとは思わない。
 いや、普通に王であるラティランに捨てられて殺されて終わるかもしれないけれど、それは世間一般の普通じゃない。
 僕の人生は僕の手で普通ではなくしてやったけれど、なくしたものを懐かしみ美しく思う気持ちはあるよ。
 あるだけ、なんだけどね。


 二人と一緒に食事をとった。僕も結構食べるほうだけれども、カルニスタミアとビーレウストは別格だね。特にビーレウストは。
 僕が食後のデザート食べてる今でも、肉の塊にフォークをつきたててる。そのローストビーフ、八皿目じゃないか。
「キュラ、儂は用意が出来たからザウディンダルのところに行くが」
「もう料理が揃ったのかい? 僕はゆっくりと食べて行くから、先に行ってて」
「解った」
 そう言って、カルニスタミアはザウディンダルの昼食を運ばせて去っていった。
「じゃあねえ〜」
 背中に声をかけながら洋梨のソルベを口に運ぶ。
 斜め向かいのビーレウストは葡萄ジュース傾けながら、切らないで塊のままさして口に運んだ肉を噛み千切る。酒好きそうな顔して、一滴も飲まないんだから。
 ま、幾ら僕でも飲ませて遊ぼうとは思わないけどね、ビーレウストは極度の酒乱だそうだから。エヴェドリットの酒乱ってのは、間違いなく殺傷に至るからね。
「パッションフルーツのソルベ寄越せ」
 そろそろ食事を終える気になったらしいビーレウストがデザートを持って来いと指示を出す。
「ビーレウスト、君さぁ……女の趣味変わったよね」
「そうか?」
「正確に言えば、前は美人なら来る者拒まずだったけど、最近拒否するタイプの女が出てきたように見える……自分じゃ気付かない?」
 本当に昔は来るもの拒まずだった。
 だから僕は君を誘ったんだけどね。男には興味がなかった君を誘った理由も説明してさ。
 “面白えじゃねえか” 乗ってくれた君だけど……君が拒否するタイプの女と、僕が君に押し付けようとしている両性具有のタイプは違うから良いんだけどさ。
「気付かねえな。別に、それ程重要な事でもねえしよ」
「まあね。それじゃ、来やしないだろうけど明日は宮殿の西側第四離宮復元のパーティーだよ」
 僕はデザートを食べ終えて、席を立つ。
「誰が行くか。じゃあな、キュラ」
「はいはい、ビーレウスト」

 僕がビーレウストを誘った理由は、ザウディンダルの処理係にするため。僕は何時かカルニスタミアを手に入れたい。
 両性具有を勝手に殺すと、僕も処刑されてしまうから殺して手に入れるという手段は除外する。カレティアのように知られていないなら罪にもならないだろうけれど、ザウディンダルのように知られてしまっていると、殺した後に問題が出てくる。
 暴行しても罰せられないのに、殺したら罰せられるって変だよね。文句言っても仕方のないことだけどさ。
 ザウディンダルを生かしたままカルニスタミアを手に入れると、食欲の代替が必要な時には抱くと思うんだよね。今はさザウディンダルのものだから良いんだけど、一度僕のものになったらザウディンダルを抱いて欲しくない。
 誰が貸してやるもんか! でもソレを言えば、僕から離れていくのは想像に難くない。
 ザウディンダルの大好きな帝国宰相様はアッチ方面強いけど、嫌いだから食欲の代替で小まめに抱くなんてことはないだろう。
 何よりも忙しいしね、帝国の全てに目を通している彼は。
 だから別の男を用意することにしてビーレウストに白羽の矢を立ててみた。元々男好きよりも、女が好きな方を選んだのは、僕は長く関係を持つつもりはないから、直ぐに切れる相手を選んだ。
 僕は色々な男に抱かれて、色々な女を強姦するけれど本当は大して好きじゃない。僕は代替行為も必要ないから、ただカルニスタミアだけに抱かれたい。
 ビーレウストは男に興味のない男だから、最初にはっきりと説明した。
『僕はカルニスタミアが好き。僕の物になったら代替行為で抱くのも許す気はない。だからその立場に君がついてよ』
『あんた、まだライハ公爵と関係すらねえんだろう?』
『そうだよ。それがどうしたって言うの? 君に関係あるの?』
『……ねえな。頑張って我が永遠の友を最高の肉欲から奪ってくれや。応援はしねえが、遠くから見てるわ。で、俺は男は初めてだ上手くリードしてくれるんだろうな、帝国最強騎士の元お稚児様』
『任せなよ』

 たまにね、僕が両性具有だったら君は僕のこと気にかけてくれたかな……とか下らないこと考えることもある。
 僕が両性具有だったら適齢期になるまで監禁されて即座に巴旦杏の塔行きだったろうけれどね。僕の異母兄は優しくないし。

『どうだった?』
『体力があって楽しめそうだな。あんたの……』
『キュラって呼ぶといいよ、イデスア王子』
『じゃあ俺のことはビーレウストかデファイノスでいいぜ、キュラ』


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